アラビア系の苗字、名前はイスラム教の影響、アラブ文化の歴史そして地理的な広がりを反映しています。
7世紀のイスラム教の誕生から現代に至るまでアラビア系の名前は、その文化的アイデンティティ、宗教的価値観や伝統を世代を超えて受け継ぐ手段となってきました。
【前説】アラビア語の名前という広大なジャンル
そして地域としても、アラビア半島だけではありません。
地域として列挙するならば、
北アフリカのモロッコからエジプト、レバノンやシリアといった中東地域、そしてイランやアフガニスタン、さらにはインドネシアやマレーシアといった東南アジアのイスラム教国、そして中央アジアのウズベキスタンやタジキスタン、さらにはバルカン半島のボスニアやコソボに至るまで実はかなりの広がりがあります。
現在では移民によって世界中の多くの国々でもアラビア系の名前を見ることができます。
英語が世界的な言語だとするなら、イスラム教とともにアラビア系の名前も世界の広い地域で影響力を持っているといえるでしょう。世界人口の約1/4を占めるイスラム教徒の多くが何らかの形でアラビア語の影響を受けた名前を持っているのです。
以下で早速名前の由来を説明していきますが、彼らの命名システムは「イスム(個人名)+ ビン/ビント(〜の息子/娘)+ 父親の名前 + 家族名」という構造が伝統的です。女性の場合は「ビント(娘)」を使います。
ジャンルとしては宗教、部族、地理的特徴、個人の特性、職業に由来するものが多く見られます。
少し前置きが長くなってしまいましたが、それでは早速、よく聞くアラビア系の名前とその意味を見ていきましょう。
宗教に由来する名前
イスラム教は名前の選択に大きな影響を与えています。コーランに登場する預言者の名前や、神(アッラー)の99の美名(アスマーウル・フスナー)に関連する名前は特に尊ばれています。
Muhammad ムハンマド
日本だとマホメットと呼ばれるイスラム教の預言者の名前で「称賛される者」を意味します。
これはイスラム世界で最も一般的な男性名の一つです。7世紀のメッカに生まれ、610年に神からの啓示を受けたとされるイスラム教の最後の預言者です。
この名前はアラビア語の語根「ḥ-m-d」(称賛する)から派生し神に称賛される者という意味を持ちます。イスラム世界では預言者への敬意を表すため多くの親が息子にこの名前を付けます。
異なる地域では発音や表記が変化し、モハメド、ムハマド、マホメットなどの変形があります。
モハメド・サラー(エジプトのサッカー選手、リバプールFCの主力選手)
モハメド・アリ(アメリカのボクサー、歴代最高のヘビー級ボクサーの一人。元の名前はカシアス・クレイだがイスラム教に改宗でモハメド・アリに。)
モハメド・アリとロッキーのレジェンドボクシング動画をどうぞw
Abdullah アブドゥッラー
「アッラーのしもべ」を意味します。アブド(しもべ)とアッラー(神)の組み合わせですね。
この名前は預言者ムハンマドの父親の名前でもあり、イスラム教徒にとって特別な意味を持ちます。「アブド」は「崇拝者」「従順な者」を意味し、神の前での人間の謙虚さを表現しています。
サウジアラビア、エジプト、ヨルダンなど多くのアラブ諸国で非常に一般的で、王族から一般市民まで幅広い階層で使用されています。
アブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズ(サウジアラビアの第5代国王、2005年から2015年まで統治)
アブドゥッラー・イブン・ヤシーン(アルムラービト朝の創設者、11世紀の宗教指導者)
もしかしたら未だにプロレスラーのアブドーラ・ザ・ブッチャーが日本では一番ポピュラーなアブドゥッラーさんかも?ちなみにブッチャーさんはカナダ人で本名はローレンスさんだったりします。
Ibrahim イブラヒーム
イスラム教、キリスト教、ユダヤ教で尊敬される預言者アブラハムのアラビア語形です。
「多くの民の父」という意味を持ち、イスラム教では特に重要な預言者として敬われています。コーランでは「ハリール・アッラー」(神の友)と呼ばれ、唯一神への絶対的な信仰の模範とされています。
アブラハムは息子イシュマエル(イスマーイール)とともにメッカのカーバ神殿を建設したとされ、巡礼(ハッジ)の儀式の多くは彼の行為に基づいています。
この名前はトルコ語圏では「イブラヒム」、ペルシャ語圏では「エブラヒム」として知られています。
イブラヒーム・アル=ジャアファリ(イラクの政治家、元首相)
Fatima ファティマ
預言者ムハンマドの娘の名前で「子供を断乳する女性」や「捕らわれた者を解放する者」を意味します。
イスラム教において最も尊敬される女性の一人であり、多くの女性に付けられる名前です。ファティマは第4代カリフのアリー・イブン・アビー・ターリブと結婚し、ハサンとフサインという息子をもうけました。シーア派では特に崇拝され、「ファーティマ・アッ=ザフラー」(輝くファティマ)という敬称で呼ばれます。
この名前は純潔、母性、知恵の象徴とされ、イスラム世界全体で女性の理想像として尊敬されています。
ファティマ・アル=フィヒリ(モロッコの教育者、世界最古の大学の一つを設立)
ファティマ・ジナー(パキスタンの女性活動家、パキスタン建国の父ムハンマド・アリー・ジナーの妹)
Yusuf ユスフ
聖書のヨセフに相当するイスラム教の預言者の名前で「神が増やすように」という意味があります。
コーランに登場する美しい物語の主人公として知られています。コーランの第12章「ユスフ章」は彼の物語全体に捧げられており「物語の中で最も美しいもの」と称されています。ユスフは美貌で知られ、兄弟の嫉妬によってエジプトに売られましたが、最終的にエジプトの宰相となりました。
忍耐、赦し、神への信頼の重要性を教えており、多くのイスラム教徒にとって道徳的指針となっています。
ユスフ・イスラム(イギリスの音楽家、元キャット・スティーブンス)
Omar オマル
第二代カリフのウマル・イブン・アル=ハッターブにちなんで名付けられることが多く「長寿」や「雄弁」を意味します。
ウマルは634年から644年まで統治し、イスラム帝国の急速な拡大を指導しました。彼は「アミール・アル=ムウミニーン」(信者たちの指導者)という称号を初めて使用し、現在のカリフ制度の基礎を築きました。
正義感が強く、自らも質素な生活を送ったことで知られ、イスラム史上最も尊敬される指導者の一人です。この名前はアラビア語の語根「ʿ-m-r」(生命、長寿)に関連しています。
オマル・シャリーフ(エジプトの俳優、「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」で国際的に有名)
オマル・ハイヤーム(ペルシャの数学者、天文学者、詩人、「ルバイヤート」の作者)
Aisha アイシャ
預言者ムハンマドの最愛の妻の名前で「生きている」や「元気な」を意味します。
イスラム教において学識と知恵を体現する女性として尊敬されており、多くのハディース(預言者の言行録)を伝えました。アイシャは「ウンム・アル=ムウミニーン」(信者たちの母)と呼ばれ、預言者の死後もイスラム共同体の指導的役割を果たしました。
彼女は2210のハディースを伝承し、特に女性に関するイスラム法の発展に大きく貢献しました。知性と記憶力に優れ、詩作や修辞学にも長けていたとされています。
アイシャ・アル=マナ(カタールの芸術家、国際的なキュレーター)
アイシャ・カダフィ(リビアの弁護士、人権活動家)
Noor ヌール
「光」を意味し、コーランの中で神の属性の一つとして言及されています。
精神的な導きと神の存在を象徴する美しい名前です。コーランの「光の章」(スーラ・アン=ヌール)では、アッラーは「天と地の光」と表現されています。この概念は物理的な光だけでなく、知識、導き、真理の象徴として理解されています。
イスラム神秘主義のスーフィズムでは、神的な光は人間の心を照らし、真理に導くものとされています。現代では男女問わず使用され特に中東の王族にも見られる高貴な名前です。
ヌール・アル=フセイン(元ヨルダン王妃、アメリカ人の母を持つハーフとして国際的に知られる)
ヌール・タギール(パキスタンの女性起業家、テクノロジー分野のパイオニア)
Bilal ビラール
イスラム初期の重要な人物で、エチオピア出身の元奴隷から解放されてイスラム教の最初の信者の一人となり、最初のムアッジン(礼拝の呼びかけ人)となった人物の名前です。
ビラール・イブン・ラバーハは美しい声を持ち、預言者ムハンマド自身によって最初のムアッジンに選ばれました。
彼の物語は人種や社会的地位に関係なく、イスラム教が平等を説くことを象徴しています。奴隷時代に拷問を受けても信仰を貫いたことで知られ解放後は預言者の信頼厚い仲間となりました。
ビラール・ハッサーニ(モロッコ系フランス人のラッパー、国際的に成功したアーティスト)
部族・氏族に由来する名前
Al-Hashimi アル=ハーシミー
預言者ムハンマドの属したクライシュ族の一派であるハーシム家に由来します。
ハーシム・イブン・アブド・マナーフは預言者の曽祖父で、メッカの商業を統制し、巡礼者への食事提供を担当していました。この血統は「アシュラーフ」(高貴な者たち)と呼ばれ、イスラム世界全体で特別な敬意を払われています。
現在のヨルダンのハーシム王家、かつてのイラクとヘジャーズの王家もこの血統に連なります。DNA研究により、この血統の多くが実際に共通の祖先を持つことが確認されています。
フサイン・ビン・タラール・アル=ハーシミー(ヨルダンの元国王、1952年から1999年まで統治)
ラーニア・アル=ハーシミー(ヨルダン王妃、人道活動家として国際的に知られる)
Al-Qurashi アル=クライシー
メッカの支配的な部族クライシュに由来します。
預言者ムハンマドもこの部族の出身であり、イスラム初期の歴史において中心的な役割を果たしました。クライシュ族は7世紀以前からメッカのカアバ神殿の管理を行い、アラビア半島の商業ネットワークを支配していました。この部族からは初代カリフのアブー・バクルを含む多くの重要な指導者が輩出されました。
イスラム法学では一部の学派においてカリフはクライシュ族出身でなければならないとする見解もあります。
アブー・バクル・アル=クライシー(初代カリフ、預言者ムハンマドの親友)
Al-Ansari アル=アンサーリー
「支援者たち」を意味し、メディナで初期のイスラム教徒を支援した部族に由来します。
622年の聖遷(ヒジュラ)の際、メッカから逃れてきた預言者ムハンマドとその追随者たちを迎え入れた2つの部族(アウスとハズラジ)の子孫を指します。彼らは自分の財産や家を新しい移住者と分かち合い、初期イスラム共同体の発展に不可欠な役割を果たしました。
コーランでも彼らの献身的な行為は称賛され、イスラム史上最も尊敬される集団の一つとされています。
ザカリア・アル=アンサーリー(15世紀のエジプトのイスラム法学者、裁判官)
地理的特徴や出身地に由来する名前
Al-Masri アル=マスリー
「エジプト出身の」を意味します。エジプトはアラビア語で「ミスル」と呼ばれ、古代からアラブ・イスラム世界の文化的・学術的中心地の一つでした。
アル=アズハル大学を擁するカイロは「アラブ世界のハリウッド」とも呼ばれ、映画産業と文学の中心地として栄えました。歴史的に、エジプトからの移住者や商人、学者たちが各地に散らばり、この姓を名乗るようになりました。
現代でも中東全域でこの姓を持つ家族が見られしばしば数世代前のエジプトとの関係を示しています。
Al-Baghdadi アル=バグダーディー
「バグダッド出身の」を意味します。バグダッドは762年にアッバース朝のカリフ、アル=マンスールによって建設され、9世紀から13世紀にかけて世界最大の都市の一つでした。
「知恵の館」(バイト・アル=ヒクマ)を擁し、ギリシャ、ペルシャ、インドの学問をアラビア語に翻訳する一大プロジェクトの中心地でした。数学、医学、哲学、天文学において画期的な発展を遂げ、多くの学者や詩人、芸術家がここに集まりました。
1258年のモンゴル侵攻まで、イスラム世界の知的首都として君臨していました。
Al-Shami アル=シャーミー
「シリア(あるいは大シリア地域)出身の」を意味します。
「シャーム」は歴史的に現在のシリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナ、そして南トルコの一部を含む地域を指していました。ダマスカスはウマイヤ朝(661-750年)の首都として栄え、イスラム建築の傑作であるウマイヤドモスクなどの重要な文化遺産を残しています。
この地域は「肥沃な三日月地帯」の一部として古くから文明が栄え、キリスト教とイスラム教の文化が融合した独特の文化を育んできました。
Al-Maghribi アル=マグリビー
「モロッコ出身の」または「西方出身の」を意味します。「マグリブ」は「日の沈む場所」を意味し、現在のモロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビアを含む北アフリカ西部を指します。
この地域は独特のアンダルシア=マグレブ文化を発達させ、特にアル=アンダルス(イベリア半島のイスラム領土)が1492年に終焉を迎えた後、多くの知識人や職人がこの地域に移住しました。
フェズ、メクネス、マラケシュなどの都市は学問と工芸の中心地として繁栄しました。
職業に由来する名前
中世のアラブ社会では多くの人々が職業によって識別されていました。これらの職業名は世代を超えて家族名となり、現在も広く使われています。
Al-Hakim アル=ハキーム
「医師」を意味します。伝統的な医学や知恵の仕事に従事していた家族に与えられました。
イスラム黄金時代には、ハキームは医学、哲学、薬学、占星術に精通した知識人として尊敬されていました。
現代でも医師や学者の家系にこの姓が多く見られ、家族の伝統として医学や学術の道に進む人が多いのが特徴です。ハキームは神の99の美名の一つでもあり、「賢明な者」という神聖な意味も持っています。
トーフィク・アル=ハキーム(エジプトの劇作家、小説家、アラブ文学の近代化に貢献)
Al-Najjar アル=ナッジャール
「大工」または「木工職人」を意味します。木材加工技術は伝統的な中東社会で高く評価されていました。
中東の乾燥地帯では良質な木材は貴重な資源であり、木工職人は特別な技術を持った専門家として重宝されました。イスラム建築の特徴的な幾何学模様や繊細な彫刻技術は、これらの職人たちの高度な技術によって支えられていました。
ムスタファ・アル=ナッジャール(エジプトの建築家、伝統的木工技術を現代建築に融合)
サマル・アル=ナッジャール(サウジアラビアの考古学者、古代の木工技術研究の専門家)
Al-Haddad アル=ハッダード
「鍛冶屋」を意味します。金属加工は古代から重要な職業であり、武器、農具、装飾品の製造に関わっていた家族に与えられました。
鍛冶技術はイスラム世界で高度に発達し、特にダマスカス鋼として知られる高品質な鋼の製造技術で有名でした。
Al-Khatib アル=ハティーブ
「説教者」または「演説者」を意味します。モスクで金曜礼拝の説教を行う重要な宗教的役割を持つ人々に与えられました。
雄弁さとイスラム教の知識が求められる尊敬される地位で、コミュニティの精神的指導者として重要な役割を果たしていました。
ハティーブは単なる宗教指導者ではなく、社会問題や道徳的指導についても語る知識人としての側面も持っていました。
Al-Attar アル=アッタール
「香料商」または「薬剤師」を意味します。中世のイスラム世界では、香料と医薬品の取引は密接に関連していました。
香料商は国際貿易の要として、インドや東南アジアからの香辛料をヨーロッパに運ぶ重要な役割を果たしていました。
Al-Saqqaf アル=サッカーフ
「屋根職人」または「建設業者」を意味します。建築技術は中東の厳しい気候に適応するために特に重要でした。
屋根職人は単なる建設作業者ではなく、断熱や防水、風通しを考慮した高度な技術を持つ専門家でした。
Al-Sabbagh アル=サッバーグ
「染色業者」を意味します。布地の染色は中東の伝統工芸の中でも重要な位置を占めていました。
特にモロッコのフェズやシリアのアレッポなどの都市では、染色技術が高度に発達し、美しい色彩の織物が作られました。
Al-Tajir アル=タージル
「商人」または「貿易業者」を意味します。中東は古くから東西交易の中心地でした。
シルクロードやインド洋貿易路で活躍した商人たちは、単なる物品の売買だけでなく文化の架け橋としても機能していました。
彼らは複数の言語を操り、異文化間の交渉術に長けた国際的な人材でした。
スポンサーリンク

個人の特性や特徴に由来する名前
Al-Aswad アル=アスワド
「黒い」または「浅黒い」を意味し、肌の色や髪の色に基づいて与えられた姓です。
アラブ社会では外見的特徴による識別は一般的で、差別的な意味ではなく単純な区別として使われていました。
この姓は特にアフリカ系アラブ人やベドウィン族に多く見られ、誇りを持って受け継がれています。
Al-Tawil アル=タウィール
「背が高い」を意味し、体格の特徴に基づいて与えられた姓です。
身長は古代から現代まで、個人を識別する重要な身体的特徴の一つでした。
この姓を持つ家系では、代々背の高い人が多いという特徴が見られることもあります。現代ではスポーツ選手や軍人、警備関係者にこの姓を持つ人が多く見られる傾向があります。
Al-Saghir アル=サギール
「小さい」または「若い」を意味し、体格や年齢に関連して与えられた姓です。
同名の年長者と区別するため、または家族内での序列を表すために使用されることが多くありました。
「サギール」は「シャイフ(長老)」の対語として、若い世代を表す意味も持っています。
Al-Jamil アル=ジャミール
「美しい」または「優雅な」を意味し、外見や性格の特徴に基づいて与えられた姓です。
アラブ文化では美的感覚が高く評価され、美しさは神からの贈り物として考えられていました。
この姓は外見的美しさだけでなく、人格の美しさや行動の優雅さも表現していました。
歴史的・政治的背景を持つ名前
Al-Hashemi アル=ハーシェミー
預言者ムハンマドの曽祖父ハーシムに由来する姓で、イスラム教の初期指導者たちの血統を示します。
ハーシム家は預言者の一族として最も尊敬される血統の一つで、現在のヨルダン王家もこの血統に連なります。この姓を持つ家系は宗教的権威と政治的正統性を兼ね備えているとされ、イスラム世界で特別な地位を占めています。
アブドゥッラー二世・ビン・アル=フサイン・アル=ハーシェミー(現ヨルダン国王)
ハーヤ・ビント・アル=フサイン・アル=ハーシェミー(ヨルダン王女、国際オリンピック委員会委員)
Al-Abbasi アル=アッバースィー
749年から1258年まで続いたアッバース朝に関連する姓です。預言者ムハンマドの叔父アッバースの子孫に由来します。
アッバース朝はイスラム世界の黄金時代を築き、バグダードを中心とした文明の発展に大きく貢献しました。
この王朝時代には学問、芸術、科学が飛躍的に発展し、現代につながる多くの文化的遺産が生まれました。
Al-Othmani アル=オスマーニー
オスマン帝国(1299-1922)に関連する姓で、帝国の行政に関わっていた家族や帝国領内からの移住者に与えられました。
オスマン帝国は600年以上にわたって広大な領土を統治し、多民族・多宗教社会の統合に成功した大帝国でした。
この姓を持つ家系は帝国の官僚制度や軍事組織で重要な役割を果たしていた歴史があります。
サアドディーン・アル=オスマーニー(モロッコの政治家、元首相)
アッラーの属性に由来する名前
イスラム教では、アッラー(神)には99の美名(アスマーウル・フスナー)があるとされ、これらの属性にちなんだ名前も広く使われています。
ただし、一部の属性は神のみに適用されるため名前には使用されません。
Abdul Rahman アブドゥル・ラフマーン
「慈悲深い者のしもべ」を意味します。アブドゥル(しもべ)とラフマーン(慈悲深い者)の組み合わせです。
ラフマーンはアッラーの最も重要な属性の一つで、無条件の慈悲と愛を表します。この名前は預言者ムハンマドの時代から使われており、イスラム教における神の慈悲の重要性を反映しています。
アブドゥル・ラフマーン・アル=スーフィー(10世紀の天文学者、「恒星の書」の著者)
アブドゥル・ラフマーン・ワヒド(インドネシアの元大統領、宗教的寛容を促進した指導者)
Abdul Aziz アブドゥル・アズィーズ
「強力な者のしもべ」を意味します。「アズィーズ」は神の属性の一つで、力と威厳を表します。
この名前は統治者や軍事指導者に特に人気があり、権力と権威を象徴する名前として重要視されています。
サウジアラビアの王家で伝統的に使用される名前で、王国の創設者もこの名前を持っていました。
アブドゥル・アズィーズ・ビン・サウード(サウジアラビア王国の創設者、初代国王)
アブドゥル・アズィーズ・アル=ハキーム(イラクの政治家、シーア派指導者)
Abdul Karim アブドゥル・カリーム
「寛大な者のしもべ」を意味します。「カリーム」は神の属性の一つで、寛大さと気前の良さを表します。
この名前は商人や慈善家に人気があり、社会に対する貢献と寛容性を象徴しています。
カリームは単なる物質的な寛大さだけでなく、精神的な豊かさと他者への配慮も意味しています。
アブドゥル・カリーム・カッスム(イラクの革命指導者、1958年革命の中心人物)
アブドゥル・カリーム・ソルーシュ(イランの哲学者、イスラム改革思想の代表者)
Abdul Malik アブドゥル・マリク
「王のしもべ」を意味します。「マリク」は神の属性の一つで、宇宙の支配者を表します。
この名前は王族や高位の官僚に人気があり、統治の正統性と責任を象徴しています。
歴史的に多くのカリフやスルタンがこの名前を持ち、イスラム帝国の拡大と統治に貢献しました。
アブドゥル・マリク・イブン・マルワーン(ウマイヤ朝の第5代カリフ、イスラム帝国の拡大に貢献)
Abdul Ghafur アブドゥル・ガフール
「赦す者のしもべ」を意味します。「ガフール」は神の属性の一つで、罪を赦す力を表します。
この名前は宗教指導者や平和活動家に人気があり、和解と許しの重要性を象徴しています。
イスラム教における赦しの概念は、個人的な罪だけでなく社会的な対立の解決にも適用されます。
アブドゥル・ガフール・ハーン(パキスタン建国前のパシュトゥーン人指導者、非暴力運動の提唱者)
現代のアラブ世界における姓
Al-Saud アル=サウード
サウジアラビアの王家であるサウード家の姓です。18世紀のムハンマド・ビン・サウードに由来します。
サウード家は1744年にイスラム改革運動家ムハンマド・イブン・アブドゥル・ワッハーブと同盟を結び、アラビア半島統一の基礎を築きました。
現在のサウジアラビア王国は石油資源を背景に急速な近代化を遂げ、中東地域の重要な大国となっています。
王家は伝統的なイスラムの価値観を保持しながら、経済の多様化と社会改革を推進する現代的なリーダーシップを発揮しています。
サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アル=サウード(現サウジアラビア国王)
ムハンマド・ビン・サルマーン・アル=サウード(サウジアラビアの皇太子、副首相)
Hariri ハリーリー
「絹商人」を意味し、レバノンでは著名な政治家家族の姓として知られています。ビジネスから政治へと影響力を広げた典型的な例です。
ラフィーク・ハリーリー(レバノンの元首相、2005年に暗殺)
サアド・ハリーリー(レバノンの政治家、ラフィーク・ハリーリーの息子、元首相)
Al-Gaddafi アル=カッザーフィー
リビアの部族名に由来し、リビアの元指導者カダフィこと、ムアンマル・アル=カッザーフィーの家族の姓として国際的に知られるようになりました。
カダフィことムアンマル・アル=カッザーフィー(1969年から2011年までリビアを統治)
サイフ・アル=イスラーム・アル=カッザーフィー(ムアンマル・アル=カッザーフィーの息子、政治家)
Al-Maktoum アル=マクトゥーム
アラビア語で「決定された」を意味し、ドバイを統治する王家の姓です。商業と国際関係に焦点を当てた近代的な発展で知られています。
ムハンマド・ビン・ラーシド・アル=マクトゥーム(ドバイの首長、UAE副大統領兼首相)
ハムダーン・ビン・ムハンマド・アル=マクトゥーム(ドバイ皇太子、「ファザ」の愛称でSNSで人気)
自然や宇宙に由来する名前
自然界の美しさや宇宙の神秘はアラビア系の名前にも反映されています。これらの名前は詩的で象徴的な意味を持つことが多いです。
Badr バドル
「満月」を意味します。アラブ文化では月は美と完璧さの象徴とされ、特に満月は特別な意味を持ちます。
イスラム初期の重要な戦いのひとつ「バドルの戦い」の名前としても知られている単語です。
バドル・ハーリ(モロッコのボクサー、オリンピックメダリスト)
Najm ナジュム
「星」を意味します。アラブ文化では天文学が古くから発達し、多くの星の名前はアラビア語起源です。星は導きと希望の象徴とされています。
日本語でもショートショートの作家などで有名な星さんという苗字はありますが、アラブ圏ならナジュムさんですね。
Riyad リヤド
「庭園」を意味します。アラブ・イスラム文化において庭園は天国の象徴とされ、特に砂漠が多い地域では緑豊かな庭園は特別な価値を持っていました。
リヤド・マフレズ(アルジェリア出身のサッカー選手、マンチェスター・シティで活躍)
Bahr バハル
「海」を意味します。沿岸地域に住む人々にとって、海は生活と生計の源であり、多くの家族がこの名前を持っています。
バハル・アル=ウルーム(イラクのシーア派宗教指導者、著名な学者家系の出身)
Zahrah ザフラ
「花」または「輝き」を意味します。美しさと純粋さの象徴として、特に女性に人気のある名前です。金星のアラビア語名としても知られています。
地域による名前の特徴
アラブ世界の広大な地理的範囲には、地域ごとに特有の命名慣習や名前の要素があります。
北アフリカの特徴
モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビアなどの北アフリカ諸国では、アラビア語とベルベル語の影響が混ざり合い、独特の名前のパターンを生み出しています。
「ベン」(〜の息子)はこの地域で「ビン」の代わりに一般的に使用されます。また、フランスの植民地支配の影響で、一部の名前はフランス語の影響を受けています。
例:ベン・ベッラ(アルジェリアの初代大統領)、
ハビブ・ブルギバ(チュニジアの初代大統領)
湾岸諸国の特徴
サウジアラビア、UAE、カタール、クウェートなどの湾岸諸国では、部族名と宗教的な名前が特に重要です。部族のつながりは社会構造において中心的な役割を果たし、多くの家族は何世代にもわたって部族の名前を維持しています。
アル=サバーハ(クウェートの王家)
アル=サニー(カタールの王家)
レバント地域の特徴
シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナなどのレバント地域では、様々な宗教コミュニティ(イスラム教のスンニ派とシーア派、キリスト教のマロン派、ギリシャ正教会、コプト派など)が共存し、それぞれが独自の命名慣習を持っています。
キリスト教徒のアラブ人はイエス(イーサー)やマリア(マリヤム)などの聖書の名前を多く使用します。
ブトロス・ガーリー(元国連事務総長、エジプトのコプト・キリスト教徒)
ファイルーズ(レバノンの伝説的歌手、キリスト教徒)
名前の組み合わせと形式
アラビア系の名前は一般的に以下の要素から構成されています
アラビア系の名前の構成
イスム(個人名):個人に与えられる名前(例:ムハンマド、ファティマ)
ナサブ(父系):「ビン」(息子)または「ビント」(娘)を使って父親との関係を示す(例:ビン・アブドゥッラー「アブドゥッラーの息子」)
ニスバ(関係性):出身地、部族、または職業に基づく帰属(例:アル=マスリー「エジプト出身の」)
ラカブ(綽名):個人の特徴に基づく名前(例:アル=タウィール「背が高い」)
クンヤ(敬称):「アブー」(〜の父)または「ウンム」(〜の母)で始まる名前(例:アブー・ハーリド「ハーリドの父」)
これらの要素すべてが常に使われるわけではなく、地域や歴史的背景によって変化します。完全な形式の例としては
男性の名前の例
ムハンマド・ビン・アフマド・アル=ハーシミー・アル=マッキー
イスム:ムハンマド(個人名)
ナサブ:ビン・アフマド(アフマドの息子)
ニスバ:アル=ハーシミー(ハーシム族出身)
ニスバ:アル=マッキー(メッカ出身)
同様に、女性の名前の例
ファティマ・ビント・アブドゥッラー・アル=クワイティーヤ
イスム:ファティマ(個人名)
ナサブ:ビント・アブドゥッラー(アブドゥッラーの娘)
ニスバ:アル=クワイティーヤ(クウェート出身)
クンヤ(敬称)は通常、最初の子どもにちなんで与えられます:
アブー・ムハンマド(ムハンマドの父) ウンム・アイシャ(アイシャの母)
最後に
現代では、多くのアラブ諸国で西洋式の姓名システムを採用し、名前の数や構成要素を簡素化する傾向があります。
パスポートやその他の公式文書では、名(ファーストネーム)と姓(ラストネーム)の二部構成になっていることが一般的です。
スポンサーリンク
↓ベルリッツ、私も英語と中国語で2つ通ってました。
N社、A社、某通訳のスクール、大学の外部向けクラスなど子供の頃から7箇所で英語を学んだことがありますが、一見社会人向けなのか高いけどベルリッツは結果考えるとコスパ圧倒的に良いというのが自分の実感です。
英語本気で出来るようになりたい方には自分は一番おすすめです。当時伸び悩んでたTOEIC、200点以上も短期で上げてくれた記憶あるので。
【7月限定キャンペーン中らしいです】7月は5万円以上浮くキャンペーンもやってるそうなので時間取れそうな方には特に激推しです。
いや、普通に割引なしに申し込んでた自分としては本気で羨ましいレベルなので是非。二言語なら私より10万以上得じゃん…😂

↑押すとクリック先のページにいきます。





