今回は英語なのか、自分としても少し趣旨が違うような気もします。しかし一応アルファベットであるしここも一応網羅しておかないと英語の数学書や科学論文が読めないのでとりあえず網羅的にということで数学の記号について書いておいてみたい。
中学レベルから大学レベルの集合論のようなものまで数学で頻繁に登場する記号の意味と使い方を解説します。
中学などでもおなじみの数学記号
π パイ
ご存知円周率を表す記号です。円の周囲の長さをその直径で割った値で約3.14159。
古代ギリシャ文字から来ており円に関する計算では必須の定数です。興味深いことにπは無理数であり小数点以下が永遠に続き繰り返しのパターンがありません。
The area of a circle with radius r is πr².
半径rの円の面積はπr²です。
∞ 無限大
境界のない量を表す記号です。「リーマン予想」や「無限級数」など高度な数学的概念でよく使用されます。∞自体は数ではなく量が際限なく大きくなることを表す概念です。
The sum of 1/n² as n approaches ∞ equals π²/6.
nが∞に近づくとき、1/n²の総和はπ²/6に等しくなります。
√ ルート
平方根、あるxの平方根とは二乗するとxになる数のことです。負の数の平方根は実数ではなく複素数になるため注意が必要です。
√25 = 5 because 5² = 25.
√25 = 5 です。なぜなら5² = 25だからです。
θ シータ
角度を表すのによく使われるギリシャ文字です。特に三角関数や極座標では頻出します。他にも角度を表す記号としてはφ(ファイ)、α(アルファ)なども使われます。
sin θ = opposite / hypotenuse in a right triangle.
直角三角形において、sin θ = 対辺 / 斜辺です。
高校レベルで使う数学記号
i 虚数単位
-1の平方根を表す記号です。i² = -1という性質を持ちます。複素数z = a + biは実部aと虚部bから構成されます。電気工学や量子力学でも重要な役割を果たしています。
e^(iπ) + 1 = 0 is Euler’s identity.
e^(iπ) + 1 = 0 はオイラーの等式です。
e 自然対数の底
約2.71828の値を持つ超越数です。微分方程式や指数関数で特に重要な定数で「自分自身を微分しても同じ値になる」という特殊な性質を持っています。金融の複利計算でも使われます。
The compound interest formula with continuous compounding is A = Pe^(rt).
連続複利での利息計算式はA = Pe^(rt)です。
∑ シグマ
総和を表す記号です。添字と上限を指定して指定された範囲の値を全て足し合わせることを意味します。例えば∑(i=1 to n)iは1からnまでの整数の和を表します。
f'(x) 導関数
関数fのx地点での瞬間的な変化率を表します。微分の基本概念で関数のグラフ上のある点における接線の傾きを意味します。ライプニッツの表記法ではdf/dxとも書きます。分野によってはこちらのが多いこともあります。
∫ 積分
曲線と座標軸の間の面積を計算するための記号です。微分の逆演算で不定積分と定積分があります。物理学でも仕事やエネルギーの計算に頻繁に使われます。
大学レベルの数学記号
∇ ナブラ
ベクトル微分演算子を表す記号です。勾配、発散、回転などのベクトル場の特性を記述するのに使われます。
∇f represents the gradient of scalar function f.
∇fはスカラー関数fの勾配を表します。
数学ではないが物理学の電磁気学分野の基本となるマクスウェル方程式もこの記号なくしては語れない。
∂ 偏微分
多変数関数において他の変数を一定に保ったまま一つの変数についてのみ微分することを表します。熱力学や流体力学などの物理学分野で頻繁に使用されるほか経済学の限界分析でも登場します。
If z = x²y, then ∂z/∂x = 2xy.
z = x²yならば、∂z/∂x = 2xyです。
∏ パイ
このパイは数列の積を表す記号です。シグマ(∑)が和を表すのに対しこちらは掛け算を表します。階乗や順列・組み合わせの計算でよく使われます。
φ ファイ
多くの場合黄金比(約1.618)を表すのに使われます。フィボナッチ数列と密接な関係があり自然界や芸術作品にも頻繁に現れる比率です。日本の建築や美術でも使われています。
The ratio of consecutive Fibonacci numbers approaches φ.
連続するフィボナッチ数の比はφに近づきます。
集合論と数の種類を表す記号
ℕ, ℝ, ℤ, ℚ, ℂ
これらの二重の字体の記号は数の集合を表します。ℕは自然数、ℝは実数、ℤは整数、ℚは有理数、ℂは複素数です。
まとめて表にするとこのような感じです。
文字 | 表す数 | 定義 |
---|---|---|
N | 自然数 | 通常{1, 2, 3, …}、文脈によっては{0, 1, 2, …}を含む |
Z | 整数 | {…, -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, …} |
Q | 有理数 | {a/b |
R | 実数 | 有理数と無理数の和集合、数直線上のすべての点 |
C | 複素数 | {a + bi} |
N 自然数
一般的には1,2,3,…を指しますが文脈によっては0を含む場合もあります。素数の分布や整数論などの分野で基本となる数の集合です。英語の「Natural numbers」の頭文字から取られています。
The set N = {1, 2, 3, …} represents natural numbers.
集合N = {1, 2, 3, …}は自然数を表します。
Z 整数
正の整数、0、負の整数を含む集合です。…-3, -2, -1, 0, 1, 2, 3…で表されます。ドイツ語の「Zahlen(数)」の頭文字から来ています。整数環の研究は代数学の重要な分野です。
Z = {…, -2, -1, 0, 1, 2, …} is the set of integers.
Z = {…, -2, -1, 0, 1, 2, …}は整数の集合です。
Q 有理数
分数の形a/b(bは0以外)で表すことができる数の集合です。名前は英語の「Quotient(商)」に由来します。小数表記では有理数は有限小数か循環小数になります。
Q includes numbers like 1/2, -3/4, and 2.5.
Qは1/2、-3/4、2.5のような数を含みます。
R 実数
数直線上のすべての点を表す数の集合です。有理数と無理数を含みます。「Real numbers」の頭文字Rから取られています。数学解析の基礎となる数の体系です。
R includes all rational and irrational numbers.
Rはすべての有理数と無理数を含みます。
C 複素数
a + biの形の数でaとbは実数、iは虚数単位です。複素平面上の点として表現でき極形式では r(cos θ + i sin θ) とも書けます。工学や物理学でも応用されています。
C = {a + bi | a, b ∈ R} is the set of complex numbers.
C = {a + bi | a, b ∈ R}は複素数の集合です。
こちら集合論に関連して群論(group theory)についての動画もついでに。(字幕を押し、設定の歯車マークを押して字幕のところから日本語を選べば日本語表示もできます。)
∀ 全称記号
「すべての~に対して」を意味する論理記号です。例えば「∀x P(x)」は「すべてのxに対してP(x)が成り立つ」という意味になります。数学的命題の厳密な表現に不可欠です。
∀x ∈ R, x² ≥ 0 ∀x ∈ R, x² ≥ 0
すべての実数xについて、x²は0以上。
∃ 存在記号
「ある~が存在する」を意味する論理記号です。例えば「∃x P(x)」は「P(x)を満たすxが少なくとも1つ存在する」という意味になります。証明の構成によく使われます。
∃x ∈ N such that x² = 4
x²=4となる自然数xが存在する。
Q&A:数学記号について
数学の記号の起源はどこから来ているのですか?
多くの数学記号は17世紀以降に体系化されました。
+や-などの基本的な演算記号についてもやっと15世紀頃から使われ始めたくらいです。期限は様々であのニュートンのライバルであるライプニッツや、数学の天才として有名なオイラーなどの数学者たちが微積分の記号(∫や∂など)などは考案しました。
そしてギリシャ文字の使用については古代から続いておりπ(パイ)やΣ(シグマ)などはその代表例です。現代の記号体系はまだ現在進行系で進化し続けています。
なぜ数学ではアルファベットではなくΣやπなどのギリシャ文字をよく使うの?
数学では多くの変数や定数を扱うため記号のバリエーションが必要になります。ラテン文字だけでは足りないためギリシャ文字が追加の記号として使われます。
また特定の概念に特定のギリシャ文字を使うことで世界中の数学者が同じ記号を理解できるという利点もあります。たとえばご存知の通りπは常に円周率を表すことが世界的に認知されているといった具合です。こうした決まりのせいで一見数学が難しく見えるかもしれないけれど、一応理解しやすくするための工夫なのです…