アイルランド系に多い名前一覧【意味と由来】

まめちしき

アイルランドは豊かな歴史と独自の言語文化を持つ国として知られています。アイルランドの名前や姓には、ケルト語の伝統、キリスト教の影響、イギリスとの複雑な歴史関係など、多様な文化的背景が反映されています。

多くの名前はゲール語(アイルランド語)に由来し、英語化される過程で発音や綴りが変化してきました。今回はアイルランドで一般的な名前と姓の起源、意味、特徴について詳しく解説します。

アイルランドの伝統的な姓

Murphy (マーフィー)

アイルランド語の「Murchadh」(海の戦士)に由来し、アイルランドで最も多い姓の一つです。 アイルランドの全ての郡に存在が確認され、国内に5万人以上のマーフィー姓の人々がいると推定されています。 英語化される前の姓は「Ó Murchadha」(ムルハダの子孫)という形でした。

エディ・マーフィー(アメリカの俳優・コメディアン、『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズで有名) コーマック・マーフィー(アイルランド出身の俳優、『ピーキー・ブラインダーズ』や『インセプション』に出演)

Kelly (ケリー)

アイルランド語の「Ó Ceallaigh」(ケラハの子孫)に由来し、「明るい頭」または「厄介者」を意味します。 アイルランド全土で一般的ですが、特にゴールウェイとメイヨー地方に集中しています。 アイルランドの最も古い姓の一つで、古代のケルト族の指導者に由来するといわれています。

グレイス・ケリー(アメリカの女優からモナコ公妃となった伝説的存在) ジーン・ケリー(アメリカのダンサー・俳優、ミュージカル映画『雨に唄えば』の主演で知られる)

O’Sullivan (オサリバン)

「Ó Súilleabháin」(小さな黒い目の子孫または片目の子孫)に由来するこの姓は、特にコーク郡に多く見られます。 アイルランドには約3万人のオサリバンがいると推定されており、デズモンド王国の貴族の血筋とされています。 16世紀にはイギリスからの迫害を受け、現在の姓の分布パターンに影響を与えました。

ロナン・オサリバン(イギリスのスヌーカー選手、世界選手権で7回の優勝を誇る) モーリーン・オサリバン(アイルランドの陸上選手、オリンピックの5000m金メダリスト)

Walsh (ウォルシュ)

ノルマン人起源の姓で、「ウェールズ人」や「外国人」を意味します。 ノルマン人の侵攻時にウェールズからアイルランドに移住した人々の子孫を示し、特に南東部に多く分布しています。 「Breathnach」というアイルランド語形もあり、「ブリトン人」を意味します。

ケイト・ウォルシュ(アメリカのスイマー、オリンピックで5つの金メダルを獲得) マーシャ・ウォルシュ(アイルランド出身の女性作家、『Once in a Lifetime』などの小説で知られる)

O’Brien (オブライエン)

11世紀のアイルランド覇王ブライアン・ボル(Brian Boru)に由来し、特にクレア州とリムリック州に集中しています。 「Ó Briain」(ブライアンの子孫)という形が本来の姓であり、アイルランドの古代王朝の末裔を示します。 中世のアイルランドで大きな力を持った一族で、「ダルカシアン」と呼ばれる氏族を形成していました。

コナン・オブライエン(アメリカのコメディアン・TV司会者、独特のユーモアスタイルで人気)

エド・オブライエン(イギリスのギタリスト、バンド「レディオヘッド」のメンバー)

こちらはコナン・オブライエンが日本訪問する回の動画。時間がある方は是非見てほしいw

コナン・オブライエンの日本旅行

Byrne (バーン)

「Ó Broin」(ブランの子孫)に由来し、「ブラン」は「カラス」を意味します。 この姓はアイルランド東部、特にウィックロー州周辺に多く、レンスター王国の皇族の血統を引いています。 11世紀頃からウィックロー山脈一帯で権力を持ち、イギリスの植民地化に対して抵抗した歴史があります。

ガブリエル・バーン(アイルランド出身の俳優、『ユージュアル・サスペクツ』などの映画で活躍) ローズ・バーン(オーストラリアの女優、『ブライズメイド』や『X-MEN:アポカリプス』に出演)

キリスト教の影響を受けた名前

Patrick (パトリック)

アイルランドの守護聖人である聖パトリックにちなんだ名前で、ラテン語の「patricius」(貴族)に由来します。 5世紀にアイルランドにキリスト教を広めた宣教師として知られ、毎年3月17日の聖パトリックの日は世界中で祝われています。 アイルランド語では「Pádraig」と表記され、「Paddy」や「Pat」という愛称がよく使われます。

パトリック・スチュワート(イギリスの俳優、『スタートレック』のピカード艦長や『X-MEN』のプロフェッサーXで有名) パトリック・デンプシー(アメリカの俳優、『グレイズ・アナトミー』のドクター役で知られる)

Michael (マイケル)

ヘブライ語起源で「神のような者は誰か」を意味し、大天使ミカエルへの信仰がこの名前の普及に貢献しました。 アイルランド語では「Mícheál」と表記され、伝統的な発音は英語版とやや異なります。 アイルランドのカトリック文化において重要な名前で、多くの教会や修道院がミカエルに捧げられています。

マイケル・ファスベンダー(アイルランド・ドイツ系の俳優、『スティーブ・ジョブズ』や『X-MEN』シリーズで活躍) マイケル・コリンズ(アイルランド独立運動の指導者、初期アイルランド自由国の創設に貢献)

Mary (メアリー)

イエス・キリストの母マリアにちなんだ名前で、ヘブライ語で「苦い」または「反抗的」を意味するとされています。 カトリックの伝統が強いアイルランドでは特に人気があり、「聖母マリア崇敬」の影響が大きいといえるでしょう。 アイルランド語では「Máire」と表記され、「Molly」や「Maureen」などの派生形も一般的です。

メアリー・ロビンソン(アイルランド初の女性大統領、後に国連人権高等弁務官を務めた) メアリー・マカリース(二人目の女性アイルランド大統領、北アイルランド和平プロセスに貢献)

John (ジョン)

ヘブライ語起源で「神は恵み深い」を意味し、使徒ヨハネや洗礼者ヨハネに由来する名前です。 アイルランド語では「Seán」(シャーン)と表記され、英語の「John」とアイルランド語の「Eoin」は同じ起源を持ちます。 アイルランドでは中世から現代まで常に人気のある名前で、「Jack」という愛称形も広く使われています。

ジョン・F・ケネディ(アイルランド系アメリカ人の元大統領、アイルランド訪問が国民に大きな影響を与えた) ジョン・バニャン(アイルランド出身のボクサー、WBO世界バンタム級チャンピオン)

Grace (グレース)

ラテン語起源で「神の恵み」を意味し、キリスト教、特にカトリックの影響で広まった名前です。 アイルランドでは16世紀の女海賊グレース・オマリー(Gráinne Ní Mháille)の影響もあり、特別な意味を持ちます。 アイルランド語の「Gráinne」(グラーニャ)と関連付けられることもあり、「優雅さ」や「品格」を象徴します。

グレース・オマリー(16世紀アイルランドの伝説的な女海賊、「海の女王」と呼ばれた) グレース・ケリー(アメリカの女優からモナコ公妃となった、アイルランド系の血を引く美女)

アイルランド語由来の伝統的な名前

Aoife (アオイフェ)

「美」や「輝き」を意味するアイルランド伝統の女性名で、発音は「イーファ」に近いです。 アイルランド神話に登場する英雄クー・チュレインの妻であった伝説上の女性の名前として知られています。 中世アイルランドでは一般的でしたが、近年のケルト文化復興とともに再び人気が高まりました。

アオイフェ・オサリバン(アイルランドの詩人、国際的な文学賞を複数受賞) アオイフェ・マクマナス(アイルランドのミュージシャン、ケルト音楽の現代的解釈で知られる)

Saoirse (シアーシャ)

アイルランド語で「自由」や「解放」を意味し、アイルランドの独立運動と関連して20世紀に広まった名前です。 発音は「サーシャ」や「シールシャ」に近く、アイルランド語特有の綴りと発音のギャップが見られます。 アイルランドのナショナリズムや文化的アイデンティティを象徴する名前として人気があります。

シアーシャ・ローナン(アイルランド出身の女優、『ブルックリン』や『レディ・バード』などで知られる) シアーシャ・ケネディ(アメリカの活動家・作家、ロバート・F・ケネディの孫でアイルランド系)

Ciara (キアラ)

「Ciaran」の女性形で「黒い髪」または「黒」を意味し、聖シアラという5〜6世紀のアイルランドの聖人に由来します。 発音は「キーラ」に近く、アイルランド語の「ciar」(暗い、黒い)から派生しています。 古代アイルランドでは髪の色や肌の色に基づいた名前が一般的で、この名前もその伝統を反映しています。

キアラ・ブラボ(アメリカ・キューバ系の女優、『ウエスト・サイド・ストーリー』リメイク版に出演) キアラ・フェラーニ(イタリアのファッションブロガー・実業家、世界的影響力を持つ)

Darragh (ダラー)

「樫の木」を意味するアイルランド語の男性名で、発音は「ダラ」または「ダーラ」に近いです。 アイルランド神話に登場する「赤い枝の騎士団」のメンバーとも関連があるとされています。 伝統的なアイルランド名ですが、英語圏では綴りと発音の違いから混乱を招くことも多い名前です。

ダラー・オシー(アイルランドのラグビー選手、アイルランド代表として活躍) ダラー・マロニー(アイルランドの政治家、環境問題に取り組む活動家としても知られる)

Conor (コナー)

「猟犬の恋人」を意味し、アイルランドの伝説的な王コナー・マク・ネッサにちなんだ名前です。 アイルランド語では「Conchobar」または「Conchobhar」と表記され、紀元前1世紀の古代アルスター王国の王の名として知られています。 現代のアイルランドで最も人気のある男性名の一つで、「コン」や「コニー」という愛称が使われることもあります。

コナー・マクレガー(アイルランドの総合格闘家、UFCで二階級制覇を達成) コナー・オバースト(アイルランド出身のシンガーソングライター、フォークロックの影響を受けた音楽で知られる)

アイルフランス・イギリス文化の影響を受けた名前

Liam (リアム)

「ウイリアム」(Uilliam)の短縮形で、フランク語の「ウィラヘルム」(Willahelm)に由来します。 アイルランド語での発音は「リーアム」に近く、伝統的な短縮形の使用増加とともに人気が高まりました。 「意志の強い守護者」または「兜の付いた意志」という原義を持ち、アイルランドでは非常に一般的な名前です。

リーアム・ニーソン(北アイルランド出身の俳優、『シンドラーのリスト』や『タクン』シリーズで有名) リーアム・ギャラガー(イギリスのミュージシャン、バンド「オアシス」のフロントマンとして知られる)

Emma (エマ)

ゲルマン語を起源とし、「全体」または「普遍的」を意味する国際的に人気のある名前です。 アイルランドではノルマン人の侵入以降に普及し、特に19世紀のジェーン・オースティンの小説『エマ』出版後に人気が高まりました。 「Em」や「Emmy」などの愛称も一般的で、シンプルで発音しやすい国際的な名前として選ばれることが多いです。

エマ・トンプソン(イギリスの女優・脚本家、アカデミー賞を複数受賞) エマ・ワトソン(イギリスの女優・活動家、『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー役で有名)

Kate (ケイト)

「Katherine」の短縮形で、ギリシャ語起源の「純粋」を意味します。 アイルランドでの形は「Caitlín」(キャトリーン)で、後に英語化されて「Kathleen」となりました。 伝統的なアイルランド名から派生しながらも国際的に通用する名前として人気があります。

ケイト・ウィンスレット(イギリスの女優、『タイタニック』など多数の名作に出演) ケイト・ブランシェット(オーストラリアの女優、『エリザベス』や『ブルージャスミン』で知られる)

Ryan (ライアン)

アイルランド語の「Ó Riain」(リアンの子孫)から来ており、「Rian」は「小さな王」を意味します。 元々は姓でしたが、20世紀後半からアメリカを中心に男性の名前として人気が高まりました。 「Rí」(王)と「an」(指小辞)の組み合わせとも考えられ、アイルランドの王族の血統を示す名前です。

ライアン・レイノルズ(カナダの俳優、『デッドプール』シリーズの主演で知られる) ライアン・ゴズリング(カナダの俳優、『ラ・ラ・ランド』や『ブレードランナー2049』に出演)

Sarah (サラ)

ヘブライ語起源で「女性」「王女」「貴婦人」を意味し、聖書のアブラハムの妻の名前です。 アイルランドではキリスト教の影響で広まり、アイルランド語では「Sorcha」(ソルハ、「明るい」「輝かしい」の意)が類似の名前です。 世界中で人気のある名前で、「Sally」や「Sadie」などの愛称形もあります。

サラ・ジェシカ・パーカー(アメリカの女優、『SEX AND THE CITY』のキャリー役で有名) サラ・マクラクラン(カナダのシンガーソングライター、90年代を代表する女性アーティスト)

その他の国際的に人気のアイルランド関連の名前

James (ジェームス)

ヘブライ語起源で「supplanter」(取って代わる者)を意味し、聖書の使徒ヤコブに由来します。 アイルランド語では「Séamus」(シェイマス)と表記され、アイルランド独立運動の指導者ジェームズ・コノリーの影響で人気がありました。 「Jim」や「Jimmy」などの愛称が一般的で、アイルランド系移民を通じて英語圏全体に広まった名前です。

ジェームズ・ジョイス(アイルランドの小説家、『ユリシーズ』や『フィネガンズ・ウェイク』の著者) ジェームズ・マカヴォイ(スコットランドの俳優、『スプリット』や『X-MEN』シリーズで活躍)

Daniel (ダニエル)

ヘブライ語起源で「神は私の裁判官」を意味する名前で、旧約聖書のダニエル書の預言者に由来します。 アイルランドではノルマン征服後に広まり、アイルランド語では「Dónall」(ドーナル)という類似の名前があります。 アイルランドの有名な歌手ダニエル・オドネルの影響で、特に1990年代以降人気が高まりました。

ダニエル・デイ=ルイス(アイルランド・イギリス国籍の俳優、史上唯一の3度のアカデミー主演男優賞受賞者) ダニエル・オドネル(アイルランドの歌手、カントリーとアイリッシュフォークの融合スタイルで人気)

Megan (ミーガン)

ウェールズ語の「真珠」を意味する「Marged」から派生したと考えられる名前です。 アイルランドとウェールズの文化交流やケルト文化の共通性から、アイルランドでも親しまれています。 「Meg」や「Meggie」などの愛称が使われ、20世紀後半から英語圏で人気が高まりました。

メーガン・マークル(元女優、英国ハリー王子の妻でサセックス公爵夫人) メーガン・フォックス(アメリカの女優・モデル、『トランスフォーマー』シリーズなどで知られる)

Chloe (クロエ)

ギリシャ語起源で「若草」や「緑の芽」を意味し、古代ギリシャでのデメテル女神の別名でもありました。 キリスト教の普及とともにヨーロッパ全域に広まり、アイルランドでも人気のある国際的な名前です。 アイルランド語の「Clodagh」(クロダ、アイルランドの川の名前)と混同されることもあります。

クロエ・セヴィニー(アメリカの女優・ファッションアイコン、インディーズ映画で活躍) クロエ・グレース・モレッツ(アメリカの女優、子役から順調にキャリアを発展させた)

Thomas (トーマス)

アラム語で「双子」を意味し、新約聖書のイエスの使徒「疑い深いトマス」に由来します。 アイルランド語では「Tomás」と表記され、聖トマス・アクィナスの影響でカトリック圏で特に人気があります。 「Tom」や「Tommy」などの愛称が一般的で、アイルランド系移民を通じて世界中に広まりました。

トマス・クラーク(1916年のイースター蜂起指導者の一人、アイルランド独立運動の殉教者) トム・クルーズ(アメリカの俳優、アイルランド系の血を引く『ミッション・インポッシブル』の主演俳優)