野球は日本でもアメリカでも人気のスポーツですが、両国間で用語の違いや英語特有の表現があります。
メジャーリーグの試合などをテレビで観戦するときも、英語の野球用語を知っておくと理解が深まり楽しさが倍増します。更に最近だとSNS上で英語解説の動画も出回っていたりするのでそういうときにも今回の記事は少し役に立つかもしれません。
野球は聞き慣れた野球用語でも興味深い歴史や言葉の由来、そして表現に幅や種類がかなりあったりします。
今後の楽な英語での観戦のために、以下で一気にまとめてざっと見ていきましょう。
フィールドと試合会場の用語
ダグアウト Dugout
選手ベンチのことで、最初期のものは実際に地面を掘り下げて(dig out)作られていたことが名前の由来です。現代では掘られていなくても「ダグアウト」と呼ばれます。「Players’ Bench(選手ベンチ)」という言い方もされますが、公式用語としては「ダグアウト」が定着しています。

マウンド Mound
ピッチャーが投球する際に立つ盛り上がった場所で、「Pitcher’s Mound(ピッチャーズマウンド)」とも呼ばれます。語源は「手」を意味する古英語の「mund」ですが、野球では「小高い丘」という意味で使われています。「Hill(丘)」と言い換えられることもあります。
フェンス Fence
もちろん外野の境界を示す壁や柵のことです。「The Wall(壁)」や特に有名なのはボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイパークにある「Green Monster(緑の怪物)」と呼ばれる高い左翼フェンスです。
ホームランを打つことを「Clear the fence(フェンスを越える)」と表現することもあります。
ベースパス Base Path
走者が塁間を走る際の通り道を指します。あまり知られていないように思いますがこれは正確には走者とボールを持った野手を結ぶ直線から、3フィート(約91cm)以内の領域、と定義されています。
ブルペン Bullpen
投手が試合前やリリーフ前にウォームアップする場所です。由来については諸説あり、雄牛(Bull)を閉じ込めておく檻(Pen)に似ていることからとも、初期の練習場が実際に牛の檻だった説もあります。「Pen」だけで略して呼ばれることもあります。

試合の進行と時間に関する用語
イニング Inning
各チームが攻撃と守備を1回ずつ行う単位で、古英語の「innung(入る)」が語源です。複数形は「innings」ではなく「innings」となる特殊な英単語です。英国のクリケットでも同じ言葉が使われますが、そちらでは複数形で使われることが多いという違いがあります。
アウト Out
打者や走者が失格となる状況を指します。「Retired(退けられた)」という言い方もあったり、特に「Three up, three down」は3人の打者が連続してアウトになる完璧な守備を表現する言葉です。これは一例ですが、野球用語はなんでもかんでも日本よりこのように言い方に表現の幅があることが多々あります。
セーブ Save
リリーフ投手が僅差のリードを守り切って勝利に貢献することを指します。この統計は1969年に公式に採用されましたが、言葉自体は1950年代から使われていました。「Hold(ホールド)」は似た概念ですが、試合終了まで投げないリリーフ投手の貢献を評価する指標です。
ワールドシリーズ World Series
メジャーリーグの年間王者を決める最終シリーズで、当初は「世界選手権」という意味で命名されました。1903年に始まり、当時は「Championship of the United States(アメリカ選手権)」と呼ばれていましたが、徐々に現在の名称に変わりました。
ダブルヘッダー Doubleheader
同じ日に同じ2チームが2試合を行うことを指します。もともとは1890年代の鉄道旅行の効率化のために始まったもので、「Twin Bill(2枚の興行チケット)」とも呼ばれます。現代では「Day-Night Doubleheader(昼夜ダブルヘッダー)」が主流となり、入場料を2回分取るケースが増えています。
バッティングとヒッティングの用語
グランドスラム Grand Slam
満塁時のホームランを指し、カードゲームのブリッジに由来しています。1881年の『シカゴ・トリビューン』紙に初めて野球用語として登場したとされています。「Slam(叩きつける)」だけで省略して使われることもあったり、「Grand Salami(グランドサラミ)」というスラング表現もあります。
フライボール Fly Ball
高く上がった打球のことで、19世紀半ばから野球用語として使われています。守備側が直接捕球できるボールを指し、「Pop Fly(ポップフライ)」や「Can of Corn(簡単に捕れるフライ)」などの表現もあります。
ラインドライブ Line Drive
低い角度で強く打たれたほぼ水平な打球のことです。「Liner(ライナー)」と略されることも多く、打球速度が速いため反応時間が短く、内野手にとって最も捕球が難しい打球とされています。野球の英語では「Scorcher(焼け付くような)」「Frozen Rope(凍った縄)」などの表現で表されることもあります。
ホームラン Home Run
打者が打ったボールを拾われることなく一周できる打撃のことです。「Homer(ホーマー)」「Round-tripper(一周旅行)」「Four-bagger(四塁打)」「Going yard(庭へ飛ばす)」など様々な言い換え表現があり、英語の野球中継ではある意味英語の表現の豊かさを楽しむことができるでしょう。
バント Bunt
バットを大きく振らず、ボールを転がすように軽く当てる技術です。この言葉の起源は不明ですが、1880年代から使われ始めました。「Sacrifice Bunt(犠牲バント)」は走者を進塁させるための戦術で、「Squeeze Bunt(スクイズバント)」は三塁走者をホームインさせるためのバントです。
ピッチャー Pitcher
これは古英語の「picchen(突き刺す、投げつける)」が語源で、19世紀の野球黎明期から使われています。Hurler(投げる人)やTwirler(ひねる人)など古風な言い換え表現もあり、特にスポーツライターが文章に変化をつけるために使うことがあります。
審判と試合管理の用語
アンパイア Umpire
古フランス語の「nonper(平等ではない=中立的な第三者)」が語源です。主審は「Home Plate Umpire」または「Blue(青)」と呼ばれることもあります。「Blue」は審判の伝統的な制服の色に由来しています。また野球ファンは「Ump(アンプ)」と略して呼ぶことも多いです。
ストライクゾーン Strike Zone
打者の膝から胸の間でホームプレート上の空間を指します。この空間を通過するボールは「ストライク」と判定されます。「The Zone(ゾーン)」と略されることも多く、投手が制球力を失ったときに「Lost the zone(ゾーンを見失った)」という表現が使われます。
ボーク Balk
投手の不正な投球動作を指し、走者がいる場合に宣告されるとすべての走者が一つ進塁できます。語源は「ためらう」という古英語の「balcian」から来ています。ルールが複雑で判断が難しいため、「The most confusing rule in baseball(野球で最も混乱するルール)」と言われることもあります。
エジェクション Ejection
選手やコーチが審判によって試合から退場させられることです。「Tossed(放り出された)」「Run(追い出された)」「Thrown out(投げ出された)」などの表現も使われます。審判がエジェクションのジェスチャーをするときに「You’re outta here!(出ていけ!)」と言うシーンは野球の名物です。
インターフェア Interference
試合の進行を妨害する行為全般を指します。打者、走者、守備側、観客など様々な主体による妨害があり、それぞれ異なるペナルティが科されます。「Fan interference(ファンによる妨害)」はファウルボールや場外ホームランを取ろうとする観客が選手の邪魔をするケースで起こります。
野球の戦術と専門用語
セイフティスクイズ Safety Squeeze
三塁走者をホームに生還させるバント戦術の一種で、走者はボールがバットに当たってから走り出します。リスクが低い代わりに成功率も下がるため、「Safety(安全)」という名前がつけられています。対義語は「Suicide Squeeze(自殺スクイズ)」で、こちらは投球と同時に走者が走り出す戦術です。
ヒットアンドラン Hit and Run
走者に走塁を開始させ、同時に打者にボールを打つよう指示する攻撃戦術です。二重盗塁を防ぎ、併殺を回避するために使われます。「Run and Hit(走って打て)」という似た戦術もありますが、こちらは走者の判断で走り出し、打者がそれに合わせる点が異なります。
ダブルプレー Double Play
1プレーで2人の打者または走者をアウトにすることです。「Twin Killing(二重殺し)」「DP」などと表現されることもあります。最も一般的なのは「6-4-3」や「4-6-3」などの内野ゴロによるもので、数字は守備位置を表しています(6=遊撃手、4=二塁手、3=一塁手)。
スイッチヒッター Switch Hitter
左右両方の打席から打つことができる打者のことです。有利な状況を作るために投手と反対の側から打つことができる貴重な能力で、「Ambidextrous batter(両利きの打者)」とも呼ばれます。ちなみに発音はアンビデクストラスです。
ピックオフ Pickoff
投手が塁に留まっている走者を刺そうとする送球のことです。「Pick(拾う)」と略されることもあります。一塁への牽制球が最も一般的ですが、どの塁にも行うことができます。成功すると「Caught napping(居眠りを捕まえた)」と表現されることがあります。
野球用語クイズ
Q: 「Can of corn」とはどういう意味でしょうか?
A: 「Can of corn」は簡単に捕球できる高いフライボールを指すスラング表現です。この言葉の由来は諸説ありますが、最も一般的なのは昔の食料品店で店員が棚の高い位置にある缶詰を棒で落として手で受け取っていたという習慣に由来するとされています。
Q: 例えば野球のポジションを表す数字で「6」は何を意味する?
A: 「6」は遊撃手(ショートストップ)を表します。野球のスコアブックでは、各守備位置を1~9の数字で表記する慣習があります。1=投手、2=捕手、3=一塁手、4=二塁手、5=三塁手、6=遊撃手、7=左翼手、8=中堅手、9=右翼手となっています。
Q: 「Southpaw」という言葉の意味と由来は?
A: 「Southpaw」は左利きの投手を指すスラング表現です。19世紀の野球場は多くが東向きに建設されており、左利きの投手が投げる腕が南側(south)に向くことからこの名前がつきました。現在では野球以外のスポーツでも左利きの選手を指す言葉として使われています。