御存知の通りイギリス発祥である英語は世界中で使われる言語です。
現在の英語の最大派閥はイギリス英語でもアメリカ英語でもなくインド英語ですが、一般にオーソドックスとされるイギリス英語と、その後アメリカで広がったアメリカ英語の違いを今回はさぐれたらと思います。
同じ概念や物を表すのに英米で異なる単語を使うことがかなりあり、これらの違いを知っておくと英語圏の国々を訪れる際や英語のコンテンツを理解する際に役立つはずです。
それでは早速。
以下では例文は基本的にイギリス英語について書いています。両国で意味が変わったりする単語はアメリカ英語も併記しています。
住居や建物における英米の呼び方
Flat / Apartment アパート
イギリスでは「flat」が大きな建物内の住居ユニットを指します。一方アメリカでは同じものを「apartment」と呼びます。イギリスでも「apartment」という単語は使われますが通常より高級な住居を指すことが多いです。
I live in a flat in central London. ロンドン中心部のフラットに住んでいます。
Garden / Yard 庭
家の周りの屋外スペースはイギリスでは「garden」、アメリカでは「yard」と呼ばれることが多いです。ただ両方で共通しているところもあって「garden」というと花や野菜を育てる手入れされた庭を英米で指すことが一般的です。
Relax in the garden on a sunny afternoon. 晴れた午後は庭でくつろぎましょう。
こちらのアメリカ人の方の綺麗な庭はfront yard gardenとタイトルを付けられています。ただのfront yardでないのはそういうことです。
更に豆知識をいうとyardは古英語のgeardに由来していて、本来は囲まれた場所という意味でした。 そのためイギリスではもっぱら家の庭なのですが、アメリカでは造船所や鉄道の基地のような場所をヤードと言うことも多いです。
Cinema / Movie Theater 映画館
映画を見に行く場所はイギリスでは「cinema」、アメリカでは「movie theater」と呼ばれます。また映画自体もイギリスでは「film」、アメリカでは「movie」と呼ぶことが多いです。
We’re going to the cinema tonight to see the new James Bond film. 今夜、新しいジェームズ・ボンド映画を見るために映画館に行きます。
Chemist / Drugstore 薬局
薬や医療品、美容製品を売る店はイギリスでは「chemist」または「chemist’s shop」、アメリカでは「drugstore」または「pharmacy」と呼ばれます。イギリスでも「pharmacy」という言葉は使われますが主に薬を調剤する場所を指します。
I need to stop at the chemist to pick up some aspirin. アスピリンを買うために薬局に立ち寄る必要があります。
First Floor / Ground Floor 階数の数え方
建物の階数の数え方は両国で異なります。イギリス英語やオーストラリア英語では地上階を「ground floor」、その上の階を「first floor」と呼びます。一方アメリカでは日本と同じ用意地上階がすでに「first floor」でその上が「second floor」となります。この違いは旅行時に特に注意が必要かもですね。
The restaurant is on the first floor of the building.
(イギリス)レストランはビルの2階にあります。
(アメリカ)レストランはビルの1階にあります。
交通関連の用語の違い
Lorry / Truck トラック
大型貨物自動車はイギリスでは「lorry」、アメリカでは「truck」と呼ばれます。イギリスでも「truck」という単語は使いますが主に鉄道車両や小型の運搬車を指します。

The lorry driver delivered our furniture this morning. トラック運転手は今朝私たちの家具を配達しました。
Coach / Bus 長距離バス
長距離を移動するバスはイギリスでは「coach」と呼ばれることが多いですがアメリカでは一般的に諸外国と同じように「bus」が使われます。
アメリカでの「coach」はスポーツのコーチや特定タイプの座席(コーチクラス)を指します。
We’re taking the coach to Edinburgh this weekend.
今週末はエディンバラまでバスで行きます。
Motorway / Highway / Freeway 高速道路
高速道路はイギリスでは「motorway」、アメリカでは地域によって「highway」または「freeway」と呼ばれます。「freeway」は特に料金を取らない高速道路を指すことが多いです。
The M25 motorway circles around London. M25自動車道はロンドンを一周しています。
Pavement / Sidewalk 歩道
歩行者用の道はイギリスでは「pavement」、アメリカでは「sidewalk」と呼ばれます。イギリスでの「pavement」は舗装された場所全般を指すこともあります。
Keep to the pavement when walking along busy roads. 混雑した道路沿いを歩くときは歩道を歩きましょう。
Petrol Station / Gas Station ガソリンスタンド
燃料を補給する場所はイギリスでは「petrol station」、アメリカでは「gas station」と呼ばれます。イギリスでの「petrol station」は主にガソリンやディーゼルを販売する場所を指します。
Fill up your car at the petrol station before a long trip. 長距離の旅行前にガソリンスタンドで車に燃料を入れましょう。
Car Park / Parking Lot 駐車場
車を駐める場所はイギリスでは「car park」、アメリカでは「parking lot」と呼ばれます。構造化された複数階の駐車施設は両国とも「parking garage」と呼ぶことがあります。
The shopping center has a large car park. ショッピングセンターには大きな駐車場があります。
Underground / Subway 地下鉄
都市の地下鉄システムはイギリスでは「underground」または特にロンドンでは「the Tube」、アメリカでは「subway」と呼ばれます。ニューヨークでは単に「the train」と呼ぶこともあります。
We took the underground from Piccadilly to Leicester Square. ピカデリーからレスターズクエアまで地下鉄に乗りました。
食べ物
Crisps / Chips ポテトチップス
薄くスライスして揚げたジャガイモはイギリスでは「crisps」、アメリカでは「chips」と呼ばれます。一方イギリスの「chips」はアメリカでは「french fries」(フライドポテト)を指します。
Would you like some crisps with your sandwich? サンドイッチと一緒にポテトチップスはいかがですか?
Biscuit / Cookie クッキー
甘い焼き菓子はイギリスでは一般的に「biscuit」、アメリカでは「cookie」と呼ばれます。アメリカでの「biscuit」はイギリスでいう「scone」に近い食事と一緒に出される柔らかいパンのような食べ物です。
We enjoyed tea and biscuits in the afternoon. 午後に紅茶とビスケットを楽しみました。
衣類と服飾品の呼び名
Jumper / Sweater セーター
「jumper」はイギリスではセーターを意味しますが、アメリカでは「jumper」は女性用のノースリーブのワンピースドレスを指します。アメリカでセーターは「sweater」と呼ばれます。
また日本では「ジャンパー」は欧米で言う「blouson」(ブルゾン)に近いアウターを指すため三つの文化で異なる意味を持つ興味深い例です。
She wore a warm jumper on the cold evening.
彼女は寒い夕方に暖かいセーターを着ていました。
Trousers / Pants ズボン
脚を覆う衣服はイギリスでは「trousers」、アメリカでは「pants」と呼ばれます。イギリスでの「pants」は下着を指すため文化間で混乱を招くこともあります。
He wore black trousers and a white shirt to the meeting. 彼は会議に黒いズボンと白いシャツを着ていきました。
Suspenders / Garter Belt サスペンダー
「suspenders」という単語は両国で全く異なる意味を持ちます。アメリカではズボンを吊るすためのストラップを指しますがイギリスではストッキングを留めるためのガーターベルトを指します。イギリスではアメリカ人が言う「suspenders」は「braces」と呼ばれます。
He wore suspenders with his formal trousers.
(イギリス)彼はフォーマルなズボンにガーターベルトを付けていました。(要注意ですね)
(アメリカ)彼はフォーマルなズボンにサスペンダーを付けていました。
Pants / Underwear 下着
「pants」はアメリカではズボンを意味しますがイギリスでは下着を指します。文化的な誤解を避けるためこの違いは認識しておくべきでしょう。イギリスで「I can see your pants」と言われたら下着が見えているという意味です。
I need to buy new pants before our trip.
(イギリス)旅行前に新しい下着を買う必要があります。
(アメリカ)旅行前に新しいズボンを買う必要があります。
Trainers / Sneakers スニーカー
イギリスでは運動靴を「trainers」と呼びますがアメリカでは「sneakers」と呼びます。語源は異なり「trainers」はトレーニング用という意味から「sneakers」は音を立てずに歩けるという特性から名付けられました。
He bought new trainers for the marathon. 彼はマラソンのために新しいトレーナーを買いました。
日常用品や道具の呼び名
Torch / Flashlight 懐中電灯
持ち運びできる光源はイギリスでは「torch」、アメリカでは「flashlight」と呼ばれます。
「torch」は本来火を使った照明具を指していましたがイギリスでは電気式のものにもその名前が引き継がれています。
Always keep a torch in your car for emergencies. 緊急時のために車に常に懐中電灯を置いておきましょう。
Rubber / Eraser 消しゴム
筆記用具の消しゴムはイギリスでは「rubber」、アメリカでは「eraser」と呼ばれます。「rubber」はアメリカではゴム製品全般や特にコンドームを指すこともあるため文化的な誤解を招く可能性があります。
Can I borrow your rubber? I need to erase this pencil mark. 消しゴムを貸してもらえますか?この鉛筆の跡を消す必要があります。
Dustbin / Trash Can ゴミ箱
家庭ゴミを捨てる容器はイギリスでは「dustbin」または単に「bin」、アメリカでは「trash can」または「garbage can」と呼ばれます。「bin」はより広義で様々な種類の容器を指すこともあります。
Don’t forget to take the dustbin out on Thursday night. 木曜の夜にゴミ箱を外に出すのを忘れないでください。
Dummy / Pacifier おしゃぶり
「dummy」はイギリスでは赤ちゃんのおしゃぶりを指しますがアメリカでは「pacifier」または地域によって「binky」や「soother」と呼ばれます。アメリカでの「dummy」は主にマネキンや人形または侮辱的な表現として使われます。育児に関する会話では特に注意が必要です。
The baby stopped crying as soon as we gave him his dummy.
(イギリス)赤ちゃんはおしゃぶりを与えるとすぐに泣き止みました。
(アメリカ)赤ちゃんは人形を与えるとすぐに泣き止みました。
Nappy / Diaper おむつ
赤ちゃんのおむつはイギリスでは「nappy」、アメリカでは「diaper」と呼ばれます。「nappy」は「to nap(昼寝する)」と関連があり赤ちゃんが寝ている間に使うものという意味合いがあります。
The baby needs a fresh nappy before bedtime. 赤ちゃんは寝る前に新しいおむつが必要です。
Mobile Phone / Cell Phone 携帯電話
携帯電話はイギリスでは「mobile phone」または略して「mobile」、アメリカでは「cell phone」または「cellular phone」と呼ばれます。アメリカでの「cell」は「cellular network(セルラーネットワーク)」に由来しています。
I need to charge my mobile phone before we leave. 出かける前に携帯電話を充電する必要があります。
他にもまだまだある英米の違い
Holiday / Vacation 休暇
休暇を表す言葉もイギリスとアメリカで異なります。イギリスでは「holiday」または「holidays」が一般的ですがアメリカでは「vacation」を使います。アメリカでの「holiday」は主に祝日や記念日を指します。
We’re going on holiday to Spain next month. 来月、スペインへ休暇に行きます。
Fringe / Bangs 前髪
額にかかる髪はイギリスでは「fringe」、アメリカでは「bangs」と呼ばれます。「bangs」という言葉は髪を切るときのハサミの音から来ていると言われています。
He got a new fringe that really suits his face shape. 彼は新しい前髪にして、本当に顔の形に合っています。
Mad / Crazy 怒っている/狂っている
「mad」はアメリカでは主に「怒っている」という意味で使われますがイギリスでは「正気ではない」「狂っている」という意味で使われることが多いです。
ただしアメリカでも文脈によっては「mad」が「crazy」の意味で使われることもあります。「Mad TV」のような表現は「crazy」の意味を反映しています。
She was mad at me for forgetting her birthday.
(イギリス)彼女は私が彼女の誕生日を忘れたことで狂ったようになりました。
(アメリカ)彼女は私が彼女の誕生日を忘れたことに怒っていました。
Closet / Wardrobe クローゼット
「closet」はアメリカでは壁に組み込まれた収納スペースを指しますがイギリスでは「wardrobe」が一般的です。イギリスでの「closet」は主に「water closet(WC)」の略としてトイレを指すことがあります。建築や不動産に関する会話でこの違いを知っておくと便利です。
All my clothes are in the closet beside the bed.
(イギリス)私の服はすべてベッドの横のトイレにあります。
(アメリカ)私の服はすべてベッドの横のクローゼットにあります。
Boot / Trunk 車のトランク
車の荷物を入れる後部スペースはイギリスでは「boot」、アメリカでは「trunk」と呼ばれます。「boot」は元々馬車の運転台下の収納スペースを指していた言葉でその名残が現代にも残っています。
I put the groceries in the boot of the car. 車のトランクに食料品を入れました。
Q&Aコーナー イギリス英語とアメリカ英語
イギリス英語とアメリカ英語、どちらを学ぶべき?
難易度的にいえば、日本人には発音的にはイギリス英語、語彙的にはアメリカ英語が向いていて難しいところです。なぜなら学校での英語がそんな形で混ざっているからです。
基本的には目的によって決めるとよいでしょう。イギリスでの生活や仕事を考えているならイギリス英語、アメリカへの留学や移住を考えているならアメリカ英語を重点的に学ぶ、といった具合でどちらかに決めて学ぶのがおすすめです。
どちらもやるのがおすすめ、などと一般論は言いません。発音やイントネーションにも大きな違いがあるため現実的にはリスニング教材などもどちらかに合わせて選ぶとよいかと思います。
イギリス英語とアメリカ英語以外にも地域による違いはありますか?
はい、インド英語、オーストラリア英語、カナダ英語、南アフリカ英語なども独自の特徴を持っています。
例えばオーストラリアでは「thongs」が日本でいうところのビーチサンダルを指すのに対し、アメリカでは少し際どい下着の一種を指したりするのでオーストラリア留学生の方がアメリカに行った際は注意でしょう。
また、カナダ英語はアメリカ英語とイギリス英語の混合的な特徴を持っています。スペルはイギリス式(colour, centre)を使いながらも発音は多くの場合アメリカ式に近いです。
これらの違いは発音にも影響しますか?
はい単語の違いだけでなく発音やアクセントも異なります。
「schedule」はイギリスでは「シェジュール」、アメリカではご存知「スケジュール」と発音されます。また「can’t」の発音の違いは非常に重要です。イギリス英語では「カーント」と明確に発音されるのに対しアメリカ英語では「キャン」とtが曖昧に発音されることが多く「can」との区別が文脈に依存することがあります。
映画やドラマなどでも英米の違いはありますか?
アメリカ制作とイギリス制作の映画やドラマでもやはりこれらの用語の違いが反映されています。イギリスのドラマでは「flat」や「lift」といった単語が使われ、アメリカのドラマでは「apartment」や「elevator」が使われるといった具合です。
字幕や吹き替えでは視聴者の国の慣習に合わせて翻訳されることもありますが原語で視聴すると両方の英語の違いを学ぶ良い機会になるかと思います。例えばハリー・ポッターシリーズはイギリス英語の、コメディドラマのフレンズやフルハウスなどはアメリカ英語の良い学習教材になるでしょう。