フランスで多い名前や苗字の意味一覧

まめちしき

フランスで多い名前と苗字の意味とその由来

フランスには歴史的背景や言語的特徴を反映した多くの名前があります。これらの名前は他のヨーロッパ諸国と同じく、やはり職業、地理的特徴、個人の特性、宗教的影響などの要素に基づいています。

多くのフランス名は中世から現代に至るまで広く使われていて、やはりフランス語を感じる独特の響きと独自の意味、由来があります。

以下では、フランスで一般的な名前の起源と意味について詳しく紹介できたらと思います。

職業に由来する名字

Lefevre (ルフェーヴル)

鍛冶屋を意味するこの名字は、金属加工の職人だった人に由来する職業姓です。英語のSmith姓に相当し、フランスでは最も一般的な姓の一つです。 フランス革命研究の第一人者として知られるジョルジュ・ルフェーブル(Georges Lefebvre)の名字としても有名です。

ジョルジュ・ルフェーブル(フランス革命を研究した歴史学者、社会史アプローチの先駆者) ジャン・ルフェーヴル(フランスの有名な俳優、声優としてもディズニー作品などで活躍)

Mercier (メルシエ)

古フランス語で商人や行商人を意味する「mercier」に由来し、中世の貿易商や織物商人などに付けられた姓です。 ラテン語の「merx」(商品)が語源で、英語の「merchant」(商人)と同じ語源を持ちます。

ルイ・セバスチャン・メルシエ(18世紀のフランスの作家、革命期のパリの風景を記録) セリーヌ・メルシエ(現代フランスの女優、『アメリ』などの映画で知られる)

Fournier (フルニエ)

パン焼き窯を管理する職人や、パン職人を表す古フランス語「fournier」に由来します。 中世ヨーロッパでは、村のパン焼き窯は共同使用されることが多く、その管理者は重要な地位にありました。

ピエール・フルニエ(20世紀のフランスのタイポグラファー、多くの書体をデザイン) ジャン・アルフレッド・フルニエ(19世紀の外科医、小児整形外科学の創始者の一人)

Charpentier (シャルパンティエ)

大工や木工職人を意味するこの職業姓は、ラテン語「carpentarius」に由来し、英語の「carpenter」と同語源です。 フランスのバロック音楽の作曲家マルク=アントワーヌ・シャルパンティエや、クレープシュゼットの考案者として知られるパティシエのアンリ・シャルパンティエが有名です。

マルク=アントワーヌ・シャルパンティエ(17世紀のバロック音楽の作曲家、宗教音楽で特に有名)

アンリ・シャルパンティエ(20世紀のパティシエ、クレープシュゼットの考案者とされる。日本のデパ地下でお馴染みの、アンリ・シャルパンティエという洋菓子店もおそらくここから由来しているのではないか)

地理的特徴に由来する名字

Dupont (デュポン)

「du」(〜の)と「pont」(橋)を組み合わせた地名姓で、橋の近くに住んでいた人や橋に関連する仕事をしていた人に付けられました。 フランスで2番目に多い姓であり、アメリカの化学メーカー「デュポン・ド・ヌムール」の創業者はフランス系アメリカ人でした。

ピエール・デュポン(フランスの歌手・作曲家、シャンソンの代表的存在)

エレウテール・イレネー・デュポン(アメリカの化学企業、財閥ともいえる名門企業デュポンの創業者、火薬製造から事業を開始)

Dubois (デュボワ)

「du」(〜の)と「bois」(森、木材)からなる地名姓で、森の近くに住んでいた人や林業に従事していた人に由来します。 フランスで最も一般的な姓の一つで、「森からの人」を意味します。

クレマン・デュボワ(フランスの映画監督、『パリ、ジュテーム』などの作品で知られる) レイモン・デュボワ(フランス人古生物学者、ジャワ原人の発見者)

Dupuis (デュプイ)

「du」(〜の)と「puits」(井戸)を組み合わせた地名姓で、井戸や水源の近くに住んでいた人に由来します。 中世の時代、井戸は共同体の中心的な場所であり、この姓を持つ人は元々井戸の管理者であった可能性もあります。

シャルル・デュプイ(フランスの政治家、1970年代に首相を務めた) ピエール・デュプイ(カナダ系フランス人企業家、世界的な建設会社SNC-Lavalinの創設者)

個人の特徴を表す名字

Blanc (ブラン)

古フランス語で「白い」を意味し、白髪や色白の肌を持つ人のニックネームから発展した姓です。 フランスワインのシャブリなど「白ワイン」(vin blanc)で有名なワイン産地と同じ「白」の意味を持ちます。

ミシェル・ブラン(フランスの俳優、コメディ映画で活躍) ローラン・ブラン(元サッカー選手、フランス代表監督としてもキャリアを持つ)

Roux (ルー)

「赤い」や「赤褐色の」を意味するフランス語に由来し、赤毛や赤ら顔の人に対するニックネームから発展しました。勘の言い方はお気づきかもしれないが、カレーやシチューでお馴染み、あの料理用語の「ルー」(flour roux、小麦粉と油脂を炒めたもの)も同じ語源である。赤色からきています。

ギー・ルー(フランスの料理人、料理法とレストランチェーンで有名) ニコラ・ルー(フランスの画家、19世紀の風景画で知られる)

Joly (ジョリー)

「陽気な」「楽しい」「きれいな」などを意味する古フランス語「joli」に由来し、明るく社交的な性格の人に付けられたニックネームです。 英語の「jolly」(陽気な)と同語源で、中世フランスでは個人の性格を表す姓が広く用いられていました。

エヴァ・ジョリー(フランス・ノルウェー系政治家、2012年仏大統領選の候補者) ドミニク・ジョリー(フランスのジャーナリスト、戦争報道の専門家)

Moreau (モロー)

古フランス語の「more」(黒い、暗い)に由来し、黒髪や浅黒い肌を持つ人に対するニックネームから発展した姓です。 中世においては外見的特徴が姓の由来となることが多く、この姓はそうした伝統を反映しています。

ジャンヌ・モロー(20世紀を代表するフランスの女優、『ジュール&ジム』などで有名) ギュスターヴ・モロー(象徴主義の画家、神話的・聖書的題材の作品を多く残す)

名前に由来する姓

Martin (マーティン)

ローマ神話の戦神マルス(Mars)に由来するラテン語「Martinus」から派生した名前で、フランスで最も一般的な姓の一つです。 4世紀の聖マルタン(サン・マルタン)はフランスの守護聖人とされ、この名前の普及に大きく貢献しました。

ジャック・マーティン(フランスの映画監督、ヌーヴェルヴァーグの一員)

アニェス・マーティン(現代フランスの女性作家、ゴンクール賞受賞者)

Bertrand (ベルトラン)

古ゲルマン語の「berht」(明るい、有名な)と「hrabn」(カラス)に由来する名前で、後にフランス化されました。 カラスは古代ゲルマン社会で死者崇拝と関連する鳥であり、キリスト教的には最後の審判を待つ警戒の象徴とされました。

ジョゼフ・ベルトラン(19世紀の数学者、代数学と微分幾何学に貢献)

ルイ・ベルトラン(フランスの政治家、欧州統合の推進者)

Thomas (トマス)

双子を意味するアラム語「t’om’a」に由来する名前で、キリスト教の使徒トマス(「疑い深いトマス」)の影響で広まりました。 フランス語での発音は「トマ」ですが、スペルは英語圏と同じく「Thomas」が一般的です。

トマ・ペスケ(フランスの宇宙飛行士、国際宇宙ステーション長期滞在を経験)

トマ・サヴォワ(フランスのシェフ、分子ガストロノミーの先駆者)

Robin (ロビン)

ゲルマン語の「hrod」(名声)と「beraht」(明るい)に由来する「Robert」の愛称形で、独立した姓となりました。 英国ではロビン・フッドの物語で有名ですが、フランスでも中世から広く使われた名前です。

モーリス・ロビン(フランス系カナダ人アイスホッケー選手、NHL伝説的存在)

ミシェル・ロビン(フランスの女優、長いキャリアで多様な役を演じる)

キリスト教の影響を受けた名前

Laurent (ローラン)

古代イタリアの都市ラウレントゥム(Laurentum)を意味するラテン語「Laurentius」に由来します。 3世紀のキリスト教殉教者聖ラウレンティウス(聖ローレンス)の影響で広まり、現代ではイヴ・サン・ローラン(YSL)のブランドで知られています。

ちなみにフランス語ではイブスンロァフランというような発音である。

イブサンローランの豆知識として少しややこしいことを紹介すると、彼はオランというフランス領時代のアルジェリアで生まれている。だがこのオランはOranで別に関係はない。グミノハリボーのボーはドイツのボンから来ていたりと企業名に名前と地名を入れたりすることがあるが、YSLはそのまま彼の名前である。

イヴ・サン・ローラン(伝説的ファッションデザイナー、YSLブランドの創設者)

フィリップ・ローラン(フランスの映画音楽作曲家、アカデミー賞受賞者)

Simon (シモン)

ヘブライ語で「聞く者」を意味する「Shim’on」に由来するこの名前は、新約聖書に登場する使徒シモン・ペトロの影響で広まりました。 フランス語では「シモン」と発音されますが、英語圏では「サイモン」と発音される同じ名前です。

クロード・シモン(フランスの小説家、ノーベル文学賞受賞者)

シモーヌ・シニョレ(フランスの女優、『悲しみよこんにちは』などの作品で有名)

Girard (ジラール)

ゲルマン語の「ger」(槍)と「hard」(強い、勇敢な)を組み合わせた古名「Gerard」のフランス語形です。 中世の武勇伝や騎士道精神と結びつき、「勇敢な戦士」を意味する名前として広まりました。

フランソワ・ジラール(現代フランスの映画監督、『シルク』などの作品で知られる)

ルネ・ジラール(フランスの人類学者、欲望の三角形理論で有名)

Gautier (ゴーティエ)

古高地ドイツ語の「Walter」のフランス語形で、「walt」(支配する)と「heri」(軍隊)の要素から成ります。 19世紀フランスの詩人テオフィル・ゴーティエは、ボードレールの『悪の華』で最大級の献辞を受けた文学者です。

テオフィル・ゴーティエ(フランスロマン主義の詩人・作家、芸術批評家としても活躍) ジャン=ポール・ゴーティエ(前衛的なファッションデザイナー、マドンナのステージ衣装で有名)

その他の色んなパターンもまだまだ

Leroy (ルロワ)

「le」(その)と「roi」(王)を組み合わせた「王の」を意味する姓で、威厳ある振る舞いをする人や、競技大会の覇者に対するニックネームとして生まれました。 中世の祭りや競技会で王役を演じた人にも付けられた可能性があります。

フランシス・ルロワ(フランスの映画作曲家、数多くの名作映画音楽を手がける)

ナタリー・ルロワ(現代フランスの水泳選手、オリンピックメダリスト)

Morel (モレル)

フランス語で食用キノコの一種「モレル」を指す言葉に由来する姓で、キノコ採集に関わっていた人や、体型や性格が何らかの形でこのキノコを連想させた人に付けられました。 フランスの料理では高級食材として珍重されるモレルキノコと同じ語源です。

ガエル・モレル(フランス映画監督、LGBTテーマの映画で知られる)

フランソワ・モレル(フランスのコメディアン、独特のユーモアで人気)

Da Silva (ダ・シルヴァ)

本来はポルトガル語の姓で「森の」を意味しますが、ポルトガルやブラジルからの移民によってフランスでも一般的になりました。 フランスにおける多文化主義の象徴的な姓の一つで、特に20世紀以降のイベリア半島からの移民によって広まりました。

ジョゼ・ダ・シルヴァ(フランス・ポルトガル系のサッカー選手、国際試合で活躍)

マリア・ダ・シルヴァ(フランス・ブラジル系の音楽家、ボサノバとフレンチポップの融合で知られる)