英語の一つの大きな特徴、そして難しさはその不規則な発音にあります。
スペルと発音の関係が直接的でない単語は英語学習者にとって大きな壁となります。(例えばスペイン語やイタリア語などのラテン語でも、同じゲルマン系のドイツ語でも、英語に比べると遥かに発音は規則的です)
この記事では特殊な発音規則を持つ英単語50選を例文付きでご紹介します。
これらの単語を理解することで英語のリスニング力と発音スキルをレベルアップさせましょう。
黙字(サイレントレター)を含む単語
Knight ナイト
「騎士」を意味する単語ですが”k”と”gh”が発音されず「ナイト」と聞こえます。中世英語では全ての文字が発音されていましたが時代と共に発音が変化しました。
The knight rescued the princess from the tower. 騎士は塔から姫を救出しました。
Island アイランド
「島」を意味する単語で”s”が発音されません。古フランス語の”isle”と古英語の”land”が組み合わさった語で後に綴りが変化して”s”が加わりました。
We spent our vacation on a tropical island. 私たちは熱帯の島で休暇を過ごしました。
Subtle サトル
「微妙な」「控えめな」という意味の形容詞ですが”b”が発音されず「サトル」と聞こえます。ラテン語の”subtilis”に由来します。
There are subtle differences between the two wines. その2つのワインには微妙な違いがあります。
Debt デット
「借金」「負債」を意味する単語ですが”b”は発音されません。ラテン語の”debitum”に由来し、語源を示すために”b”が後に挿入されました。
He worked hard to pay off his student debt. 彼は学生ローンを返済するために一生懸命働きました。
Pneumonia ニューモニア
「肺炎」を意味する医学用語ですが先頭の”p”が発音されません。ギリシャ語の”pneuma”(息、空気)に由来します。
She was hospitalized with pneumonia last winter. 彼女は去年の冬に肺炎で入院しました。
Psychology サイコロジー
「心理学」を意味する単語ですが”p”が発音されず「サイコロジー」と聞こえます。ギリシャ語の”psyche”(精神、魂)に由来します。
She’s studying psychology at the university. 彼女は大学で心理学を学んでいます。
Listen リッスン
「聞く」という動詞ですが”t”は発音されません。古英語の”hlysnan”から発展した単語です。
Please listen carefully to the instructions. 指示をよく聞いてください。
Wednesday ウェンズデイ
「水曜日」の英語ですが”d”が発音されず「ウェンズデイ」と聞こえます。古英語の”Wōdnesdæg”(ウォーデン神の日)に由来します。
Our weekly meeting is scheduled for Wednesday. 私たちの週例会議は水曜日に予定されています。
Receipt レシート
「領収書」「レシート」を意味する単語ですが”p”は発音されません。古フランス語の”recete”を経て、ラテン語の語源”receptus”を反映するために”p”が追加されました。
Keep your receipt in case you need to return the item. 返品する場合に備えてレシートを保管しておいてください。
Salmon サーモン
こちらもおなじみの単語と思います。「サーモン」「鮭」を意味する単語ですが”l”は発音されません。
Grilled salmon is a healthy dinner option. グリルしたサーモンは健康的な夕食の選択肢です。
特殊な母音の発音を持つ単語
Colonel カーネル
「大佐」を意味する軍隊の階級名ですが発音は「カーネル」となります。イタリア語の”colonnello”(小さな列の長)に由来しますが、フランス語経由で英語に入り発音が変化しました。
The colonel addressed his troops before battle. 大佐は戦闘前に部隊に訓示しました。
Women ウィミン
「女性たち」という意味ですが、単数形の”woman”(ウーマン)と異なり”o”が「ィ」と発音されます。古英語の”wīfmann”(女性の人)に由来します。
Women have played important roles throughout history. 女性たちは歴史を通じて重要な役割を果たしてきました。
Choir クワイアー
「合唱団」を意味する単語ですが”ch”は通常の「チ」ではなく「ク」と発音され「クワイアー」と聞こえます。古フランス語の”quer”を経て、ラテン語の”chorus”に由来します。ハンドベルのハンドベルクワイアーなども有名ですね。
The church choir practices every Sunday. 教会の聖歌隊は毎週日曜日に練習します。
Blood ブラッド
「血」を意味する単語ですが”oo”は通常の「ウー」ではなく「ア」と発音されます。古英語の”blōd”に由来しますが発音が時代と共に変化しました。
Doctors need to run some blood tests. 医師はいくつかの血液検査を行う必要があります。
Leopard レパード
「ヒョウ」を意味する単語ですが”eo”は「エオ」ではなく「エ」と発音されます。ギリシャ語の”leopardos”(ライオンのようなヒョウ)に由来します。
The leopard is known for its distinctive spotted coat. ヒョウはその独特の斑点のある毛皮で知られています。
Sword ソード
「剣」を意味する単語ですが”w”は発音されず「ソード」と聞こえます。古英語の”sweord”に由来します。
The medieval knight carried a heavy sword into battle. 中世の騎士は重い剣を持って戦いに臨みました。
Trough トロフ
「飼い葉桶」「谷」を意味する単語ですが”ough”は「アフ」ではなく「オフ」と発音されます。古英語の”trog”に由来します。
The farmer filled the trough with water for the animals. 農夫は動物たちのために飼い葉桶に水を入れました。
単語の一部だけ特殊な発音規則を持つ単語
Comfortable コンフタブル
「快適な」という形容詞ですが”for”が短縮され、全体で「コンフタブル」と3音節で発音されることが多いです。特に会話では中間の音節が省略されます。
These shoes are very comfortable for walking. これらの靴は歩くのにとても快適です。
Vegetable ベジタブル
「野菜」を意味する単語ですが中間の”e”が省略され「ベジタブル」と発音されることが多いです。ラテン語の”vegetabilis”(植物の、成長する)に由来します。
You should eat more vegetables in your diet. あなたの食事にはもっと野菜を取り入れるべきです。
Mathematics マスマティクス
「数学」を意味する単語ですが会話では”math”(米)または”maths”(英)と短縮されることが多いです。ギリシャ語の”mathema”(学問、科学)に由来します。
She excels in mathematics at school. 彼女は学校で数学に秀でています。
Laboratory ラボラトリー/ラブ
「研究室」「実験室」を意味する単語ですが会話では”lab”と短縮されることが多いです。ラテン語の”laboratorium”(作業場)に由来します。
Scientists spend long hours in the laboratory conducting experiments. 科学者たちは実験を行うために研究室で長時間を過ごします。
Basically ベイシクリー
「基本的に」という副詞ですが中間の”i”が弱く発音され「ベイスクリー」とも聞こえます。”basic”(基本的な)から派生した単語です。
Basically, the two theories are quite similar. 基本的にその2つの理論はかなり似ています。
Miscellaneous ミスレイニアス
「雑多な」「様々な」という形容詞ですが”cell”が「セル」ではなく「レイ」と発音されます。ラテン語の”miscellaneus”(混合した)に由来します。
The box contained miscellaneous office supplies. その箱には様々なオフィス用品が入っていました。
Chocolate チョコレート
「チョコレート」を意味する単語ですが第2音節の”o”が無声化され「チョクレート」とも聞こえます。
Dark chocolate contains antioxidants. ダークチョコレートには抗酸化物質が含まれています。
Different ディフレント
「異なる」という形容詞ですが会話では中間の”er”が弱くなり「ディフレント」と発音されることが多いです。ラテン語の”differens”(異なる)に由来します。
Everyone has a different opinion on this matter. この問題については誰もが異なる意見を持っています。
発音と綴りが大きく異なる単語
Worcestershire ウースターシャー
イギリスの地名で「ウースターシャーソース」として知られています。綴りからは全く想像できない発音で「ウースターシャー」と発音されます。
Add a dash of Worcestershire sauce to the stew. シチューにウースターシャーソースを少し加えてください。
Quinoa キヌア/キノア
南米原産の穀物の名前でスペイン語経由で英語に入った単語です。「キヌア」または「キノア」と発音され、綴りからは想像しにくい発音です。
Quinoa is a nutritious grain that’s high in protein. キヌアはタンパク質が豊富な栄養価の高い穀物です。
Draught ドラフト
「ドラフト」「生ビール」を意味する単語でイギリス英語では”draft”と同じ意味で使われます。「ドラフト」と発音され、綴りからは想像しにくいです。
He ordered a draught beer at the pub. 彼はパブで生ビールを注文しました。
Victuals ヴィトルズ
「食料」「食糧」を意味する古い英語表現ですが「ヴィトルズ」と発音されます。ラテン語の”victualia”(食料品)に由来します。
The ship was stocked with victuals for the long voyage. その船は長い航海のための食料を積み込んでいました。
Boatswain ボースン
船の「甲板長」を意味する職名ですが「ボースン」と発音されます。海軍や商船では今でも使われている役職名です。
The boatswain’s whistle called the crew to their stations. 甲板長の笛は乗組員を持ち場に呼び出しました。
Faux Pas フォーパ
フランス語由来の表現で「失態」「恥ずかしい間違い」を意味しますが「フォーパ」と発音されます。文字通りには「誤った一歩」という意味です。
She committed a social faux pas by asking about his divorce. 彼女は彼の離婚について尋ねるという社交上の失態を犯しました。
Paradigm パラダイム
「パラダイム」「典型」を意味する単語ですが「パラダイム」と発音されます。ギリシャ語の”paradeigma”(模範、型)に由来します。
This discovery represents a paradigm shift in our understanding. この発見は私たちの理解におけるパラダイムシフトを表しています。
Rendezvous ランデブー
「待ち合わせ」「会合」を意味するフランス語由来の単語ですが「ランデブー」と発音されます。文字通りには「あなた方は行きなさい」という意味です。
They arranged a rendezvous at the café. 彼らはカフェでの待ち合わせを手配しました。
綴りの発音が文脈によって変わる単語
Read リード/レッド
「読む」を意味する動詞ですが現在形では「リード」、過去形・過去分詞形では「レッド」と発音が変わります。
I read [リード] books every day. (現在形) 私は毎日本を読みます。
I read [レッド] that book last year. (過去形) 私は去年その本を読みました。
Wind ワインド/ウィンド
「風」を意味する名詞では「ウィンド」、「巻く」を意味する動詞では「ワインド」と発音が変わります。
The wind [ウィンド] is blowing strongly today. (名詞) 今日は風が強く吹いています。
Please wind [ワインド] up the clock. (動詞) 時計のゼンマイを巻いてください。
Live ライブ/リブ
「生きる」という動詞では「リブ」、「生の」という形容詞では「ライブ」と発音が変わります。
Many people live [リブ] in this city. (動詞) 多くの人々がこの都市に住んでいます。
We watched the live [ライブ] broadcast of the concert. (形容詞) 私たちはコンサートの生中継を見ました。
Tear ティア/テア
「涙」を意味する名詞では「ティア」、「引き裂く」を意味する動詞では「テア」と発音が変わります。
A tear [ティア] rolled down her cheek. (名詞) 一筋の涙が彼女の頬を伝いました。
Be careful not to tear [テア] the paper. (動詞) 紙を破らないように注意してください。
Bow バウ/ボウ
「弓」「お辞儀」を意味する名詞では「バウ」、「お辞儀をする」という動詞では「ボウ」と発音が変わります。
He used a bow [バウ] and arrow for hunting. (名詞) 彼は狩りに弓矢を使いました。
In Japan, people bow [ボウ] when greeting each other. (動詞) 日本では人々は挨拶するときにお辞儀をします。
アクセントの位置が重要な単語
Present プレゼント
「贈り物」の名詞では第1音節(「プレ」)、「提示する」の動詞では第2音節(「ゼン」)にアクセントがあります。
I bought a present [プレズント] for her birthday. (名詞) 彼女の誕生日にプレゼントを買いました。
He will present [プリゼント] his findings at the conference. (動詞) 彼は会議で彼の調査結果を発表する予定です。
Object オブジェクト
「物体」の名詞では第1音節(「オブ」)、「反対する」の動詞では第2音節(「ジェク」)にアクセントがあります。
There’s a strange object [オブジェクト] in the sky. (名詞) 空に奇妙な物体があります。
I object [オブジェクト] to this proposal. (動詞) 私はこの提案に反対します。
Desert デザート
「砂漠」の名詞では第1音節(「デ」)、「放棄する」の動詞では第2音節(「ザー」)にアクセントがあります。
The Sahara Desert [デザート] is in Africa. (名詞) サハラ砂漠はアフリカにあります。
A soldier should never desert [ディザート] his post. (動詞) 兵士は決して持ち場を放棄すべきではありません。
Produce プロデュース
「農産物」の名詞では第1音節(「プロ」)、「生産する」の動詞では第2音節(「デュー」)にアクセントがあります。
The store sells fresh produce [プロデュース]. (名詞) その店は新鮮な農産物を販売しています。
This factory can produce [プロデュース] thousands of units daily. (動詞) この工場は毎日何千もの製品を生産できます。
Content コンテント
「内容」の名詞では第1音節(「コン」)、「満足している」の形容詞では第2音節(「テン」)にアクセントがあります。
The content [コンテント] of the book was interesting. (名詞) その本の内容は興味深かった。
She seems content [コンテント] with her new job. (形容詞) 彼女は新しい仕事に満足しているようです。
発音の特殊ルールQ&A
なぜ英語にはこれほど多くの特殊な発音規則があるのですか?
英語の特殊な発音規則はその豊かな歴史的背景に由来しています。英語はゲルマン語族の言語として始まりましたが、ノルマン征服後にフランス語の影響を大きく受け、さらにラテン語やギリシャ語など様々な言語から単語を借用してきました。
それぞれの言語から取り入れた単語は元の言語の発音の特徴を部分的に保持していることがあります。
また「大母音推移」と呼ばれる15世紀頃から18世紀にかけての発音の大きな変化により、綴りと発音の不一致がさらに増加しました。英語の綴り方は標準化されましたが発音は時代と共に変化し続けたため、現代の英語では綴りと発音の間に大きなギャップが生じています。
この複雑さが英語を学ぶ際の課題となる一方で言語の豊かな歴史を反映しているとも言えます。
英語の黙字(サイレントレター)にはどのような種類がありますか?
英語の黙字(発音されない文字)にはいくつかの種類があります。
まず”knight”や”know”の”k”、”write”や”wrist”の”w”のように単語の先頭に位置する黙字があります。これらは古英語では発音されていましたが時代と共に発音されなくなりました。
次に”debt”や”subtle”の”b”、”island”の”s”のように語源を示すために後から追加された黙字があります。これらはラテン語やギリシャ語との関連性を明示するために挿入されました。
また”autumn”の”n”、”castle”の”t”のように特定の子音の組み合わせの中で発音されない文字もあります。さらに”though”や”light”の”gh”のようにかつては発音されていたが現代英語では発音されなくなった文字もあります。
これらの黙字は英語の綴りを複雑にしている一方で単語の語源や歴史的発展に関する貴重な情報を提供しています。
特殊な発音を持つ英単語を効率よく学ぶコツはありますか?
特殊な発音を持つ英単語を効率よく学ぶにはいくつかの効果的な方法があります。まず、単語を個別に暗記するのではなくパターンで学ぶことが重要です。
例えば”-ough”の発音パターン(though, through, tough, cough)をグループとして学べば記憶に定着しやすくなります。次に発音記号(IPA)の基礎を学ぶと辞書で発音を確認する際に役立ちます。また語源に注目することも有効です。
例えばギリシャ語由来の単語では”ps-“, “pn-“の”p”が発音されないというパターンがあります。さらに音声付き辞書やアプリを活用して実際の発音を繰り返し聞くことが大切です。
そして何より発音に注目しながら多読・多聴を行うことで自然と特殊な発音規則に慣れていきます。
最後に自分で発音してみることも重要です。口に出すことで聞き取りと発音の両方が向上します。継続的な練習と言語の規則性と不規則性の両方に対する好奇心を持つことが長期的な学習の鍵となります。